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評者◆秋竜山
あいさつを忘れた日本人、の巻
No.3295 ・ 2017年03月18日




■たしかに、おかしな世の中になってしまった。なんて、フッと思った。私など子供の頃は、地方の田舎であったが、大人が子供に、あいさつをするようにと、いわれたものであった。あいさつといっても、ごく普通のことであり、朝は「お早うございます」。昼は、「今日は」。そして夜は「今晩は」で、あった。ある地方へ旅行した時、夕方、五、六人の中学生か高校生か。道ですれ違った時、「今晩は」と、声をかけられた。私は、驚きと同時に感動したのであった。知らない土地で知らない人に、突然あいさつをされた。もちろん私もあわてて、「今晩は」と答えるように声を発した。きっと、この土地では、知らない人でも出会ったらあいさつをするようにと教育されているのだろうと思って、日本も捨てたものではないなァ!! と、旅先であったかい気持ちにさせられたのであった。そんなこともあった、と昔のあの頃を思い出し、そんな日本でもあったなんて、なつかしむ時代になったように思われる。いつ頃からか、子供たちがあいさつをしなくなったように思う。と、いうのは親たちに道で知らない人に出会っても、あいさつしてはいけない!! と、強くいわれるようになったのである。子供のユーカイ事件などひんぱんにおこり、新聞にニュースとして取り上げられるようになったからだ。親としては子供に、知らない人になれなれしくあいさつなどしてはいけないといって聞かせるのは当たり前のことである。子供たちのあいさつもそうだが、大人に対する表情がきびしくなってしまった。大人もやたらに子供に親しげに声をかけてはいけないような風潮になってしまった。子供ばかりではない。大人たちの間でも、昔と違って人同士が、つっけんどんになったというか、あいさつをしなくなった。あいさつを忘れた日本人というか。その内に日本からあいさつというものがなくなってしまうのではないかと思えてくる。
 野口恵子『「ほぼほぼ」「いまいま」!?――クイズ おかしな日本語』(光文社新書、本体七四〇円)に、挨拶について。
 〈「今日はお日柄もよく…」「今日はよいお天気で…」という挨拶の出だしの部分ということで、「今日は」と書く。仮名書きの「こんにちは」でもよい。「今晩は」も同様だ。(略)東京の下町言葉では「こんにちは」を「コンチワ」と言うことがある。文字にする際は「こんちは」「今日は」でもよいが、話し言葉の音声をそのまま表記するには片仮名で書いたほうがわかりやすい。音の文字化だから、「コンチワ」と「ワ」にする。片仮名で「コンチハ」と書いてあると、目に飛び込んだ文字をそのまま、つまり「ハ」を「ハ」のままで読んでしまうことがあるからだ。「コンニチワ」も同様だ。「今日は」「こんにちは」と書くのが一般的ではあるが、「コンニチワ」と片仮名で書くと、親しい人に向けて少し陽気な挨拶という感じになる。〉(本書より)
 お早う!! と、「お」を入れるが、「今日は」には「お」を入れない。「お今日は」なんてことになってしまう。昔、「今晩は」に「お」を入れて「お今晩は」なんていうコメディアンがいて、大いに笑わせたものであった。私が村の青年団に入団したての頃、「今晩は」ではなく、「おしまいです」なんて、いわされた。一日のおしまいという意味だろうが、「おしまいです」なんて妙な気分がしたものであった。







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