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評者◆秋竜山
現実の村の空家、の巻
No.3292 ・ 2017年02月25日




■なるようにしかならない。が、しぜんの摂理。ドサッ、という音。田舎を代表する音である。田舎へ行ってみるとわかるが、過疎化はすさまじい音をたてて進行している。一昨年より昨年、昨年より今年。今年より来年。もう、いやになってしまう。この嘆きを誰にぶつけるべきか。そんな人ごとのような正義感ぶつのもいやだけど。いた人間がいなくなる。あった家が無くなる。その昔、村の長男が村を出るということは、みんなに非難されたものであった。長男が村を捨てて、親を捨ててどーなるんだ!! ということであった。そんな感覚であったのである。親もかげ口をいわれた。「まったく子供に甘い親だ。砂とうよりもサッカリンよりも甘いんだから」と、いわれた。長男は村に残って親のあとをつぐものだ!! と、いわれたものであった。今は、長男が村を出なくてはならない時代である。村には働き口がないからだ。村に残された親たちは老人となっていく。
 『世界のすごい廃墟』(日販アイ・ピー・エス、本体六八〇円)という本は〈世界の廃墟、日本の廃墟〉のすごさの写真集。
 〈廃墟とは、建物や施設、街や村などの集落、鉄道、船などが何らかの原因によって使用が中止された後、そのまま放置されて荒れ果てた状態になっているものを指す。〉(本書より)
 廃墟への侵入などを薦めるものではなく、廃墟の歴史的背景や現在の状況、その美的価値を紹介することを目的とするものである。と本書で述べているが、有名な城や建物であったり施設や街や村である。日本のものとして〈群馬と長野の県境に位置する碓氷峠の渓谷に架かる「めがね橋」〉とか、長崎の軍艦島とか、その他である。
 廃墟とは「アア、ここに昔、人が住んでいたんだなァ……」と、溜息の出るところである。村へ残って生活していた親たちも老人となり、老人の先は、村へ空家をつくるということだ。「あそこの家も、空家になった」「あそこの家も、もうあとかたもない」と歯の抜けたような村の風景である。村から日本人が消えてしまい、その内に外国人がなだれ込んでくるなんてことになったらどーしましょう。日本の村は外国村になってしまうのだ。日本人が住まなくなり、住めなくなって土地や家を外国人が買って住む。それが新しい日本の集落の始まりということになるかもしれない。
 未来のことを考えてみる。五十年後、百年後、その時の日本はどのようになっているか。五十年後や百年後だったらなんとか想像がつくかもしれないが、五百年後とか千年後の日本の姿はどうなっているか。昔、「猿の惑星」と、いう映画のラスト・シーンでビックリさせられた。砂浜に「自由の女神」だったと記憶しているが、頭の部分が砂から出ている、というものだった。この映画のような時代がやってくるかもしれない。砂浜から、スカイ・ツリーの先っぽが出ていたらどーしましょう。そんな映画のような想像力よりも現実の村の空家の前を夜に通り抜ける時。さみしくて、見ないようにしてそっぽをむいて足早に通り抜けるという。つまり、村の夜道はかけ足で歩くということである。







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