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評者◆小嵐九八郎
歴史・今・権力への考察が骨太――TBSメディア総合研究所編『調査情報 2017年1~2月号』(本体七三一円、TBSテレビ発行)
No.3292 ・ 2017年02月25日




■老いたせいか、大学の文学系のバイト先でこの三、四年、学生が小説の評論や実際の執筆をする時に、説明や描写があまりにあっさりでがっくり。下手な詩を読まされている感じなのだ。その上、語彙が貧しい。某カルチャー・センターでもバイトをしているが、全員三十代半ば以上のせいか、俺よりも綿綿として綴るわけで、なまじ当方の老いだけに問題があるのではなく、スマホによるLINE、ツイッターでの言語の用い方の影響と考える。
 もっとも、今の政府の高官からトップまで、要のことを、のらりくらりと外して誤魔化し、果ては居直って言語学者や作家以上に言葉の意味を転換してしまうわけで、しんど。小学生に英語を仕込むより、日本語についてもっともっと試練と勉強するチャンスを作るべきだろう。ま、俺も含めてのことだ。
 こういう折、『調査情報』(2017年1月~2月号、TBSテレビ発行、TBSメディア総合研究所編集、本体731円)という雑誌を手に取り、読んだ。『調査情報』という雑誌名が、何だか公安関係の筋を思わせたり、探偵のそれという無気味さがあったけど、無縁。表紙に「視点を検証し確認する」とメイン・テーマを掲げているように、報道する側からの自己のあり方の検証をしている。にもかかわらず、そこにのみ眼差しを限定していない広がりがある。もっと言うと、テレビ会社の資金力を背にしているのだろうか『文藝春秋』とか『世界』並み、ううん、それ以上のぎりぎりの中身なので、かなり、びっくり。
 その証は「パラリンピックは世の中を変える」とリオのスタッフの生きた総括があり、おいし。“京都の伝統工芸と戦争”という連載では韓国併合の国策と伝統に迫っていることに示される。こういう追いは大切そのもの。
 冒頭の言語についてにも関連するが、頭を鳩尾まで垂れたのは金平茂紀さんというキャスターの“メディア論の彼方へ”の連載71回目の『ああ、言葉から意味が剥離していく』だ。言語論の原則をきっちり踏んで、沖縄での機動隊の本音の言「土人」などから、ディランの作詞の感動の中味、武田泰淳の小説への辺見庸さんの言葉と、歴史・今・権力への考察が広角で骨太そのものだ。
 アマゾンで買えるのかしら。







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