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評者◆添田馨
象徴と民心④――個々人が声をあげ始めた
No.3288 ・ 2017年01月28日




■「退位『特例法』を軸に」――12月8日付の朝日新聞(朝刊13版)は、1面トップで、このように報じた。「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」なるものが、「特例法を軸に今の天皇陛下に限って退位を可能とするよう政府に求める方針を固めた」という内容だ。
 国の象徴である天皇陛下にまつわる問題を、何と「特例法」で対処するというその拙劣な姿勢は、憲法と陛下をとことんまで軽視した不敬の所業に他ならない。また、これほど重要なテーマを議論するのに、なぜ野党は政府のこの一方的な進め方に異議を唱えないのか。これについても、私は大いに疑問である。
 だが、その一方で、心ある人士が少しずつ声をあげ始めているのだ。
 「摂政や一代限りの特別立法を唱える方々の見解は、私に言わせれば『天皇唯物論』だ」――民進党議員の細野豪志は、12月1日付の自身のブログにこう記した。「私はこれまで静かな環境での議論が進むことが望ましいと考えてきたが、ここまで見解が分かれると、踏み込まねばなるまい」と。当然だろう。「かつて閣僚として陛下の激務を見てきたものとして言いたい。陛下は物ではない。人なのだ」と彼は言いきる。まさに、見るに見かねての本気の発言だ。
 また、小林よしのりは12月10日付のブログに、陛下のさきの「おことば」は「極私的な考え」で退位をにじませたのではなく、「高齢化に伴い『譲位』という制度を採り入れなければ、象徴天皇制は安定的に機能し続けていかないという『公的』な提案」なのだと書く。そして「(皇室)典範に『抜け穴』を作り、『ちゃちゃっと』特例法で済ませるのは、明らかに天皇陛下への侮辱であり、叛逆である」とまで言っている。私もまったく同感だ。
 8月8日の「おことば」は、政治的権能をもたない陛下にとって、存在を賭したまことに必死の発言だった。天皇陛下を孤立させてはならない。もっともっと、私たちは抗議の声をあげていかなければならぬのではないか。







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