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評者◆秋竜山
迷信の中で生きている、の巻
No.3283 ・ 2016年12月17日




■つくづく思うことは、風習や迷信の中で生きているということだ。特に迷信であるのにそれがわからない。みんなで、わからなければ、生活するのにちっとも困らない。それが、迷信であることを知ってビックリする。千葉公慈『知れば恐ろしい 日本人の風習――「夜に口笛を吹いてはならない」本当の理由とは――』(河出文庫、本体六六〇円)では、
 〈そうした科学的根拠にもとづく「知性」が、数多の迷信や妄想を白日の下にさらし、文明の発展に貢献してきたことは揺るがない事実である。しかしその一方、人類の悠久の歴史において、「恐怖」という感情が果たしてきた役割は、さらに大きいといわねばならない。それはヒトがサルであった時代、外敵から身を守るために働いたプリミティブな心理であり、「怖い!」という思いこそ、人間のあらゆる観念の中でもっとも古い感情だからである。〉(本書より)
 タイトルの「知れば恐ろしい日本人の風習」、ということで「何が?」ということになり、そういう予感は感じている。知らないだけの話だ。知らなければ、それで済むものを、こうなったら知らないわけにはいかないだろう。かくして、本書を読まされてしまうという仕組みであるようだ。目次にあるように、〈1章、奇妙で不可思議な「しきたり・タブー」の謎を解く〉とか、〈2章、身近な「年中行事」に秘められたミステリーとは〉とか、〈3章、「子どもの遊び・わらべ唄」のルーツをたどって見えた恐怖〉とか、〈4章、本当に恐ろしい「昔話」はいかに編まれたか〉など。「へー!? へー!?」を連発する面白さである。〈夜に口笛を吹いてはならない〉では、
 〈むかしから、夜に口笛を吹くことはタブーとされている。地方によっては、夜に口笛を吹くと蛇が出るともいうが、いずれも不吉だとして戒めてきた。夜に口笛を吹くなど単純に周囲の者は不快であろうから、もちろんマナーとして当然であるが、しかし、その意味まで迷信とは片付けてよいのだろうか?――闇夜を闊歩する悪霊、鬼、妖怪を呼び寄せてしまうから。――そのむかしに「人買い」がいた頃、夜に人知れず口笛でやりとりしていたから、つまり、人さらいが来るから、――泥棒たちは口笛でやりとりをしていたから。――インドの蛇使いのように、蛇を引き寄せるから。――ミミズが口を舐めるから。――親を吹き殺すから、もしくは親を早死にさせるから。嵐を呼ぶから、あるいは海が流れるから。――魔が差すから。〉(本書より)
 私の子供の頃には口笛が恐怖である迷信はいきていた。年寄りが子供に言ってきかせたものであった。暗くなって口笛を吹くと、木の枝にとまっている鳥たちが鳴き声と間違えて眼をさますからと、おそわった。大人も子供も夜になると絶対に口笛など吹かなかった。日活アクション映画が全盛の頃であり、映画の一場面などに、夜霧にむせぶ港、どこからともなく流れてくる口笛。これも夜の口笛であった。昼の明るい時にいくら口笛が流れてきても、恐怖などというものはうまれるものではない。口笛を吹きたくても、鳴らなければ話にならない。スースーという音は口笛とはいわない。







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