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評者◆添田馨
象徴と民心③――有識者会議とヒアリングへの批判
No.3282 ・ 2016年12月10日




■安倍官邸が勝手に立ち上げた「天皇陛下の生前退位を巡る有識者会議」なるものに、私はいかなる権威も正統性も認めない。従って、同会議がいま進めている「有識者ヒアリング」に関しても、その内容が天皇のあり方を決める今後の政府方針に反映されることに、強く反対する。
 すでに2回行われた有識者ヒアリングは、専門家と言われる人たちがそれぞれの立場から考えを述べる機会として設けられたが、その論点は最初から天皇の「生前退位」ということが前提とされている。これは絶対におかしい。国民のあいだに大きな共感をもって受け入れられた天皇陛下の「お気持ち」の核心は、ご自身が全身全霊をもって「象徴」としての務めを全うしたいという点にあり、今後もそうあり続けるために皇室の安寧を願う内容であって、生前の譲位云々はその方便として言外に示されていたに過ぎぬ。従って、陛下のこうしたお気持ちをいま最も踏みにじっているのが、この「有識者会議」の存在に他ならない。
 なぜならば、同会議のこうした性格は、先の今上天皇の「お気持ち」表明の意味を、高齢による退位の問題だと決めつけ矮小化しているからである。このようなものを国民的議論の場として認めることなど到底できない。しかも8月の陛下の「おことば」を受け、政府が用意したのはこの怪しげな有識者会議だけであり、最も批判されるべきは安倍官邸のこうしたおざなりの対応姿勢であるのは歴然である。
 天皇陛下自らが憲法規定に抵触寸前の大きなリスクを冒してまで、個人としてのお気持ちを全国民に向かって表明するという、この前代未聞の大事件に対する、これが安倍政権の非道な仕打ちに他ならない。私たちはこのことに対して、もっともっと怒りの声をあげていかなくてはならない。そして、みぎひだり関係なく、真に国民的な議論につながる建設的な意見表明の実績を、かたちにとらわれず積み重ねていく必要があるのだ。私たちの“公共”がいま激しく問われている。







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