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評者◆ベイベー関根
バイク乗らずが読むバイク漫画。
雨はこれから vol.1
東本昌平
No.3281 ・ 2016年12月03日




■東本昌平、と書いて、はるもとしょうへい。知ってる人は激しく知ってると思うけど、知らない人は全然知らない、バイク漫画の巨匠だ。『キリン』、なんだかんだいって、今でもやってんだからなー。
 こちとらバイクに乗るわけでもないし、「走るの大好き♡」(バトルとかそういうやつ含む)なマンガっておおむね興味ないんだけどさ、東本昌平はなぜかちょっと気になるんだよな。
 車好きにも、ホラ、メカが好きな人っているじゃん。まず、それがちょっと気にいらない(笑)。実際の車とかバイクとか写真に撮って、それをトレースしときゃリアルに見えるんでしょ、みたいな感じ。で、類型的な人物たちがアホみたく勝負に命懸けたり、女取り合ったりするじゃん。もうそれだけでついてけんもんね。そういうマンガはほかにも多いけどさ。
 いや、東本昌平も、そういうところはあるわけよ、メカが好きとか勝負をしたりとか人物が類型的だとか、絵が大友克洋に似てるとか。だけど、何か許せるところがあるんだよなー。
 で、『雨はこれから』なんだけど、店頭で手にとって、ちょっと驚いたのな、まず安くて。A5判で、そこそこ厚みもあって、本体630円+税。次に、「編集 「雨はこれから」製作委員会」って書いてある。映画じゃないヨ~!(てか、製作と編集って、全然違うだろ)細かいことをいえば、バーコードの位置も普通と違うんだけど、それはまあいい(笑)。中を見ると、巻頭にカラーページが7ページもある。で、あの値段。さらに、カラーになってるのは、マンガじゃなくて、バイクの写真なのだ! それでいいの!?
 ま、いいんだろうな。で思うのは、東本昌平って、やっぱり描きたいことを描きたくて、やりたいことをやりたい人なんだな、ということ。そんなん当たり前じゃん、と思う? でも東本の場合、描きたいものを描くってことに、あんまりよけいな常識みたいなもんが介入してこないところが大事な気がすんだよね。バイクの描写は丁寧だけど、トレースしてれば正確なんでしょっていう描き方とはちょっと違う、いっちゃあ雑にすら見える(でも愛情は伝わってくる)タッチだし、どうでもいい背景は、思い切ってすっ飛ばしてる。で、それって別にダメじゃないと思うんだよね。だって人間って、そういうふうに世界を見てるんだもん。一方で、バイクに乗って走ってるところは、本当~~にそれが楽しそうに描かれてる。それで充分なんじゃないの?
 ……と、問われてるような感じ。だから許せるのかな、東本昌平は。
 ちなみに話は、広告業界を辞めて、マンガ家への転身を計っている(!?)シブ親父が郊外のドライブインを借りて、気ままな一人暮らしを始めたら、そこに女やら若造やらがやってきて……みたいな、よくある感じ(笑)。でもまあ、読むとこはそれ以外にもあるんじゃないの、というお話でした!







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