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評者◆秋竜山
改名しても変わらないもの、の巻
No.3281 ・ 2016年12月03日




■昔、赤塚不二夫が名前を変えた。赤塚らしいとみんなよろこんだ。変なことをするのが赤塚の代名詞のようでもあった。そしてマンガ連載が開始された。たしか〈山田太郎〉という名前に変えられた。ところが、みんな「エ!!」と驚き、そして大笑いした。画風が昔のままの赤塚マンガであったのである。誰がみても赤塚不二夫が描いた漫画であった。これでは何のために名前を変えたのかわからない。赤塚ギャグなのである。なにがなんだかさっぱりわからないから可笑しいのである。これが赤塚ナンセンスであったのだ。赤塚不二夫はいつも人を驚かすことを考えていたようである。だから、いろいろ驚かせてみんなを笑わせ、その笑いがおこると赤塚のうれしそうな顔になった。みんなそれをゆるすといった、そういう時代であった。
 変なマンガ家ということでは、今では久里洋二がいる。久里洋二は常に自分のマンガを変えようとしている。今まで様々に画風を変えた。画風とは文体であるから、画風が変わるごとにマンガの発想とか内容が違ってくる。一貫しているのが、すべてナンセンスマンガだということである。昔はマンガ家というとナンセンスマンガ専門と決まっていたようであるが、時代と共になぜそうなってしまったのか、ナンセンスマンガを見たくても見られない時代になってしまった。描き手がなかったのか。昔、大いに活躍していたマンガ家がどんどん描かなくなったというか、あの世へいってしまったのである。こんな哀しいことはない。後をつぐ若手がいなくなった。後つぎがいなくなるのは、どの世界も一緒のようだ。そんなボヤキはさておき、久里洋二がナンセンスマンガで息まいている。今度ブ厚い広辞苑のようなマンガ集を出した。もちろんナンセンスマンガ集である。これを機会かどうかはしらないが、なんと久里洋二という名前を変えたというのである。
 ヨウジ・クリ『クレージーマンガ』(発行・ユジク阿佐ヶ谷・本体二八〇〇円)。だからこの本は久里洋二改め、ヨウジ・クリということになっている。みんな「エッ」と驚いたが、その驚きも久里洋二らしい笑いのある驚きである。誰がみても久里洋二のマンガであることがわかってしまう。「なんだ!! 久里洋二のマンガではないか」と、バレてしまうのである。改名された名前であるにもかかわらず、久里洋二の昔の作品に通ずるものがあるからだろう。そこが、久里洋二のマンガの不思議さでもある。赤塚不二夫は、名前を変えても昔の赤塚マンガ画風そのものを描いた。久里洋二は昔の久里洋二の画風ではないものに進化させたような画風である。誰が描いたかわからないような(一見)画風であるが、すぐ久里洋二とわかってしまうのが不思議でもあり面白いのである。大観がピカソと名前を変えて大観の画風で日本画を描いたのが、赤塚不二夫である。大観がピカソと名前を変えて誰の画を描いたのかわからないような画風で描いたのが久里洋二だろう。







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