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評者◆秋竜山
すってんころりん、の巻
No.3280 ・ 2016年11月26日




■喜劇としての転け、がある。笑いがおこる。面白おかしく転けてみせる。たとえ喜劇としての演技であっても差別的笑いではないかといわれそうでもある。老人時代になると、転ける人が多くなる。もし現実の生活の中で老人の転けるのを見て笑ったとしたら、あきらかに差別だろう。転けるのは老人ばかりではなく、若者だってよく転ける。ポイすてされた空きカンにのっかって、すってんころりんする。老人も若者もないだろう。喜劇としての転けといったのは、笑いを生むために転けてみせる、いわゆる転け芸というものだ。
 枡野俊明『限りなくシンプルに、豊かに暮らす』(PHP研究所、本体一〇〇〇円)では、
 〈道元禅師が記された「正法眼蔵」の中に、「愛語」という言葉が出てきます。「触れ合う人に向けては、いつも思いやりの心をもって、相手の気持ちを思い優しい言葉をかける。このことをいつも心に留めておきながら相手と話をする。それが愛語というものです」。禅師の言うところのこの心がけは、誰もが分かってはいても、なかなか実行するのが難しいものです。何も相手を攻撃するような言葉を放ちたいわけではない。相手の心をわざわざ傷つけようとしているわけではない。ところが結果として相手の心を傷つけてしまう。(略)余計なことはなるべくしゃべらないようにすること、言わなくてもいいことは心の中に留めておくこと。そんな心がけをもつことが必要でしょう。〉(本書より)
 見ザル聞かザル笑わザルをきめこんでいても、もし、突然、目の前で人が転けたとする。笑うべきことではない。常識からして当たり前のことである。ところが、まわりの人たちが一斉に大笑いしてしまった。笑う感情に負けてしまったのだろうか。ある夫婦連れが一緒に街を歩いていて、連れの亭主が突然、何かにつまずいて転けてしまった。その時、笑ったまわりの人たちより大きな声で笑ったのが女房であった。「ガハハハ……」。亭主が真っ赤になって怒った。「バカもん!! お前まで笑ってどーするんだ」。女房が「すみません」と、あやまった。すみませんですむ問題ではないだろう。マンガみたいな出来事であるが、とりかえしのつかない感情である。
 笑いということで、マンガでよく見かけるのが「転ける」という動作である。転けて笑わせる。四コママンガにこのような転けの場面が多いだろう。転けることによってオチにもっていく。安易な手法とうけとられるかもしれないが、転けるということはこれに勝るものはないだろう。四コママンガの場合は、四コマ目に転けさせる。転けて笑わせて終わりというわけだ。マンガ独特の手法であるが、転ける時に発する音というのがある。実際にこのような音が出るわけではないが、マンガの画面の中に文字で音を入れる。音無しで転ける場合もある。それは、サイレントの場面のほうが効果的に笑いを生むこともあるからだ。あえて転けた時の音を出さず、たとえば、ドタン、とかバタン、とか、コロンとかツルッとか。文字音がなくても音を感じさせる表現法がある。実際には「スッテン」などという音はないだろうが、マンガだと、文字でスッテンと表現する。実際にこの音つきで転けたら、どんなものか見てみたいものである。







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