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評者◆ベイベー関根
すぐ隣にある別世界。そこへ通じる扉のカギは?
冬のUFO・夏の怪獣
クリハラタカシ
No.3280 ・ 2016年11月26日




■あのさー、ここで取り上げたいマンガはめっちゃたくさんあるんだけどさー、今回だけはちょっと寄り道させてほしいんだよな。
 といってもマンガはきっちり紹介するぜ、ハイコレ、クリハラタカシの『冬のUFO・夏の怪獣』!
 こーれがさー、い~いわけよ! 何てことなさそうでちょっとだけある、藤子・F・不二雄先生のSF(説明するのもこっ恥ずかしいが、「少し・フシギSukoshi Fushigi」の略ね)作品が高野文子の世界に迷い込んだような素晴らしい傑作だ!
 で、なんでそんな素晴らしい傑作が「寄り道」かというと、これ、出たのが去年だったのよ……。出たのは知ってたんだけど、完全に見落としてたんだな。いや、たいへん申し訳ない、クリハラ先生ならびに読者の皆々様! クリハラタカシといえば、やはりあの名作『ツノ病』で、まあ今回もそういう系列の作品かなーとなんとなく思い込んじゃって、つい……。これも本にビニールかけちゃって中が見えなくなることの弊害だ! とぶち上げたいところだが、カバーをちゃんと見てみれば、そういうものでないことはわかったはずだった……。まあ、そんなお詫びの意味を込めて、刊行から1年を過ぎてなお、ここで取り上げさせていただくことにした次第。
 このマンガ、特に1冊を通じて主人公がいるわけじゃない。ある海辺のひなびた町に住む(でいいんだよね?)いろんな人々が出くわすちっちゃな事件や発見や思いつきをちょこっちょこっと集めた短編集だ(けど、これ1冊ですごくまとまったひとつのお話のようでもあるな)。
 たとえば、せーのでいっしょにまばたきしたら、相手がまばたきしてる瞬間は見えないとか、2着の服を2人で着る発明とか、超音速機のトイレは未だに垂れ流しだとか、ウソも含めたちっちゃな発見が、「あるあるモノ」とは別なかたちで報告されてて、それぞれ何か別の世界につながっているような気持ちにさせてくれるんだよな。
 登場するのは、赤い帽子のお父さんと黄色い帽子の坊や、ほんわかカップルひろしとみどり、私立探偵大町駿作、発明好きの中学生・博士くん、隣のクラスでヒミツ倶楽部を主宰するキョーコさん、といった愛らしい人々から、話す犬、怪獣ルードンと勇者リンピオスZ、そしてUFO……。
 くー、和むわー。こんな町に住みてえわー。でまたこの本、ほぼフルカラーでさ、色がホントにキレイなんだよな……。
 こういうちっちゃな発見って、次々思いつけるわけじゃないから、作者もあとがきで書いてるけど、完成するまで10年くらいかかってるらしい。でも、それに見合った豊かな味わいが詰まってるなー。しつこくも押しつけがましくもなく、フツーと地続きな別世界を、サラリと垣間見せてくれる。タイプは全然違うけど、赤瀬川原平って、こういうものを見つける達人だったよなー。
 最近ワクワク感が足りないなーと思ってる人に、ぜひオススメするぜ!







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