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評者◆左子真由美
『写真集 パリ、あの夏』(竹林館)を出版した
写真集 パリ、あの夏――ジャン・ピエールを探して
左子真由美
No.3280 ・ 2016年11月26日
■詩が好きだから、いつでもポエジーを探して、フランス・パリ、夏の静寂とざわめきを写し出す――ジャック・プレヴェールの詩に出会い、フランスに憧れた竹林館代表・左子氏による詩・写真集
関西に事務所を構える出版社・竹林館代表の左子真由美氏が、『写真集 パリ、あの夏――ジャン・ピエールを探して』を上梓した。パリ市街地の風景を切り取ったカラーとモノクロのスナップショットはもちろん、添えられている詩も左子氏によるものである。 「一〇年前から撮りためていた写真をまとめました。フランス、そしてパリが大好きで、この一〇年間ほぼ毎年行っています。だいたい一週間くらい滞在して、パリをはじめとしたフランスの都市を巡っています。でもこうして仕事をしていると、夏休みにしか行けない。だから全部夏の写真なのです」。そんな季節感のみならず、都会のざわめきや静寂までも湛えている写真ばかりだ。 写真を本格的に始めたのは、一〇年ほど前。好きな写真家は木村伊兵衛。「古い時代のパリも撮っている方です。ああいう写真が撮れればいいなと思いますが、無理です」とはにかむ。 昨年、芦屋写真協会の一員になった。「その協会に入ったのは、パリの写真協会と提携しているからです。合同の展覧会を向こうで開いたり、こちらで開いたりしているのです。それで面白いなと思って。もちろん出品されるのは、うまい作品だけですけどね」。 左子氏は出版人であると同時に、詩集を多数著している詩人でもある。「高校生のときから詩を書いていました。エミリー・ブロンテの詩を読みまして、それに触発されて、似たようなことを書いていたのです。それが最初ですね」と振り返る。本書の詩は、まるで風景のなかに溶け込んでしまいそうなほどの自然さで、写真に寄り添っている。飾らずに、それでいながら余韻を残す言葉の響きは、これまで積み重ねてきた詩作の賜物なのだろう。 その言葉たちは、ゆるやかな物語を紡ぎ出す。「私の本業は、写真家ではありません。好きで撮っているだけです。それだけに、どうやって見せるかを考えたとき、ゆるい物語仕立てにすることで、少しでも興味を持ってくれる人が増えるのではないかと思ったのです。『あ、この人がジャン・ピエールじゃないかな?』という感じで読んでもらえれば嬉しいですね」 フランスへの憧れは、大学生のときにジャック・プレヴェールの詩を読んだことによるそうだ。「本当に素晴らしい詩人だと思いました。それからフランスに憧れ、原書で読みたかったのでフランス語も勉強したいなと。学部の専攻は国文科でしたが、フランス語の授業は受けていました。でも全然できなくてね。文法も落としてしまい、もうダメと思って、継続しなかったのです。卒業してだいぶ経ってから、自分でフランス語の勉強を始めました。学生時代にもっとまじめにやっておけばよかったと思います」と苦笑い。 ところでサブタイトルの「ジャン・ピエール」について尋ねると、「ジャン・ピエールが付く映画監督のこと? といろいろ言われるのですが、違います」。すると意外な答えが返ってきた。「私の娘が大学卒業後、フランスに一年間留学することになったのです。その目的の一つがフランス人の彼を見つけること。その彼の仮の名前が〝ジャン・ピエール〟だったのです。それがずっと頭に残っていて、サブタイトルにしてみました」。そして気になるその「彼」はというと、「結局、見つからなかったようです。日本に帰ってきて、普通に日本人と結婚しました」とのこと。 お気に入りの写真三点を挙げてもらった。四四・四五頁「会う人 別れるひと/そして ふたたび会えぬひと」という詩が添えられた、水しぶきの向こう側に女性がたたずんでいる、ルーヴル美術館のクールカレ。四六・四七頁「ベルヴィルに/あのカフェは今もあるだろうか?」という詩が添えられたカフェのオ・フォリーは、「エディット・ピアフのポスターが気に入って撮りました。だらーっとした男たちの表情もいいでしょう」。そして、「三人の女性の生き生きとした感じを写すことができました。横でおっちゃんたちが、彼女たちを品定めしているのよね」と言う五四・五五頁のシャンゼリゼ通りの写真だ。実際に本書を手に鑑賞してほしい。 写真の面白さについては、次のように語った。「対象の切り取り方とか、何を撮るかによって、写真には自分自身が写ると思う。だから同じものを撮っても、一〇人いればそれぞれの表現になる。また、向こうからやってくるものもありますね。つまり意図しないものが写る面白さもある。別にこの人を狙って撮ったわけではないのに、映り込んでしまうという面白さ。例えばその人が足の長いジャン・ピエールになったりする。いつでもポエジーを探して撮っています。やっぱり詩が好きなんでしょうね」 実は今年は、年末年始の休みを利用してフランスに行く予定だそうだ。となると、夏とはまた違った風景と出会うことになるだろう。そんな左子氏の「パリ、あの冬」は、どんな旅になるのだろうか。風景と言葉が巡り合う、その瞬間に切られるシャッター。一葉、一葉に漂うポエジーをゆっくりと味わいたい。 |
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