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評者◆秋竜山
お日本語のお敬語さん、の巻
No.3276 ・ 2016年10月29日




■〈女性は男性よりも敬語を使うことが多いという点です。〉と、本書でいう。ロジャー・パルバース『驚くべき日本語』(早川敦子訳、集英社インターナショナル、本体一〇〇〇円)では、日本語の敬語の一面。敬語といえば、丁寧語につきるだろう。男性よりも女性に多いというのも、女性らしさのやさしさであると思う。
 〈たとえば、日本の女性は「お砂糖」「おビール」「お方(二重の丁寧語です!)」「お嫌いですか?」など、名詞の前に「お」をつけて話すことも、男性より多いといえます。そして、こういった言葉の使い方は、だれを相手に話しているかで変わります。〉(本書より)
 つまり、やたらと、「お」をつければよいのだ。つけてよいのかどうか、わからなくて迷うなんて時は、かまわず「お」をつけてしまえばいいだろう。「お」がついているといって怒る人はいないはずだ。すべて「お」をつけてしまうと、「お」が敬語かどうかがわからなくなってしまう。いう方も、いわれる方も、わからない。わからないということは敬語の価値というよりも、敬語でなくなってしまうだろう。よく考えてみると、男性が女性化してしまっている今では、男性とか女性とかいう区別はないようである。「おビール」は男性でも使われている。「おビールちょうだい」なんて、男性がいう。「おコーヒー」なんて、男性がいう。「お紅茶」なんていう。「お冷」なんていう。男性がいったからって女性的であるとは思えない。ある所で、女性が「やばい」を連発していた。その内に、「おやばい」なんて、いい出すかもしれない。昔、「あたしバカよね、おバカさんよね」なんて歌があったが、「おバカさん」もバカに対する敬語だろうか。「お利口さん」というのもある。
 〈名前や物のあとに続いて修飾する、おそらく非日本人からするととても便利でシンプルな丁寧語を一つだけ挙げておきたいと思います。それは、「さん」という短い言葉です。そもそも「さん」とは何かを考えてみると、大変不思議なものだと気づきます。「田中さん」「恵美子さん」「ロジャーさん」というように使われるこの短い丁寧語は、初めて日本語に接して外から眺める限り、実に直截的です。(略)でも日本語では、男性であれ女性であれ、日本人であれ非日本人であれ、大変便利なことに、すべて名前に「さん」をくっつけるだけで、相手への敬意を表すことができます。〉(本書より)
 「このお方は、どちらさんですか?」なんて、いいかたをする。この敬語の「さん」も「お」と同じように、すべて「さん」づけしておけば問題はないだろう。十代の頃、ある役所に勤めたことがあった。その時、局長とか部長とか課長とかを呼ぶのに、みんな「さん」をつけていた。私は、そういうものだと思っていた。先輩が、「さん」をつけることは間違っている、「課長さん」ではなく、正しい呼びかたとしては「課長」でよいということであった。私は、そういうものかと、「課長」と大きな声でいった。課長はギクッとした表情にかわった。そして、三秒……私は「さん」とつけ加えた。なんともバツの悪い思い出である。







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