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評者◆小嵐九八郎
アラブ世界、イスラーム世界を見る眼――常岡浩介著『イスラム国とは何か』(本体一四〇〇円・旬報社)
No.3274 ・ 2016年10月15日




■アメリカのツイン・ビルとペンタゴンへのアルカイダの自爆攻撃から、この九月で、一五年がたった。それで、アフガニスタンへ、イラクへと米国を軸として侵攻、五年前には「アラブの春」で人人が何とか主人公になれるかもと考えていたら、イラクがフセイン時代より泥沼、シリアではアサド政権が強硬でこれまた泥沼、そのうちアルカイダよりもっと激しいらしいイスラム国が伸長、新聞・雑誌などでは「イスラム国は大したことはない。アラブの春の不徹底性や脆さの隙を狙っての一時的なもの」という傾きの説だ。
 本当に、そうなんだろうか――と自問する俺自身が、というより三派全学連や全共闘運動を経た老人世代が、世界の変革を言いながら、世界の半分しか見てこなかったことに恥を感じてしまう。アラブの世界、イスラームの世界を見る眼を失っていた。せいぜい近現代史の“進歩”のつけとしてしか意識できていなかったのだ。ま、依然として近現代史の欧米の強引なる線引きの領土分割のどでかく深く縫合などし得ない傷は残っている。しかし、最も規定していたのは、宗教を「それは民衆の阿片である」(『ヘーゲル法哲学批判』)と説いたマルクスの“教え”で俺は無知そのものだった。コムニスムから宗教を批判する程度としか、『旧約聖書』『新約聖書』『コーラン』を読んでこなかった。
 これではならじといろいろ勉強するのだが、何しろアラビア文字の日本の片仮名が老いた頭に刻みつけられぬ。その上でイスラム国支配下に三回も足と生死をかけて取材をし、警視庁に睨まれ「私戦予備陰謀罪」で家宅捜索を受け、自身もイスラム教徒である常岡浩介さんの著で、聞き手は通信社特派員をやり世界に詳しい高世仁さんで成る『イスラム国とは何か』(旬報社、1400円+税)を読んだ。去年の二月発行なので流動する情勢に少し古いかも知れないが、イスラム国がどこから発生し、その外部との関わり、宗教の中身、実体とかなりリアルに解る。やはり「アラブの春」のこと、シリアのアサド政権の阿漕さあたりが当面の問題らしい。俺を含めイスラームの勉強を、う、う、うーんと頑張らないと世界史は滅びそう。







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