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評者◆秋竜山
ホントーにどーかしている日本、の巻
No.3273 ・ 2016年10月08日
■歴史ミステリー研究会編『終戦直後の日本――教科書には載ってない占領下の日本』(本体五三七円・彩図社)で、もしかすると、雑誌の歴史の中で一番生き生きとした時代というか、「もう、こんな時代は二度とやってきません」とでもいえるような雑誌の時代ではなかったろうか。と、いうことは、もうこれ以上面白い雑誌づくりはできません!! と、いうような時代、それが終戦直後の日本の雑誌の歴史でもあるわけだ。私は子供時代であったから、そんな雑誌を大っぴらには見られなかったが、終戦直後、まってました!! とばかりに昭和二十年代、三十年代初め頃まで、まさに雑誌の時代であったと思う。どこの家庭にも一冊や二冊はそんな雑誌があった。子供には見せられないので、茶の間の茶ダンスの裏とか、鏡台の下とかにかくすように置かれてあった。子供というのは物をさがし出す才能があったから、大人に見つからないようにさがし出してはコッソリ読んで、もとの場所にソッと置いておいたものであった。あの時のゾクゾクした大人の味ともいうべきゴラク雑誌のことを何十年たった今でも忘れることはできない。そして、もう二度とないことも。
〈8月15日の玉音放送によって負けたと知らされた人々は、半月後には「鬼畜」と呼んでた敵を、支配者として受け入れなければならなかった。いったいこれから日本はどうなるのか……そんな恐怖と不安を抱えながら、新しいスタートを切ることになるのである。〉(本書より) それは大人たちであり、私たちのような子供にはそんな恐怖心とか不安感などというものはまったくなかった。いったいこれから日本はどうなるのか……なんて一度も考えたこともなかった。毎日がたのしい一日であり、親の目を盗んでは、見られては困るような雑誌を見ていたのであった。 〈戦中は文化的な活動が抑圧されていたが、戦争が終わると、大衆の文化的欲求はしだいに息を吹き返してきた。なかでも、戦後次々に創刊されては消えていった大衆向け娯楽雑誌の代表格であるカストリ雑誌は街角で売られて大人気となった。「真相」「実話」「変態集」「狂艶」など、扇情的なタイトルの雑誌が次々に創刊されたが、あまりに競合が多かったために3号発行できればいいほうで、1号出してはつぶれてしまう雑誌も多かった。〉(本書より) いかに、面白い雑誌であったか、その時代のゾクゾク感があった。 〈「3号出せばつぶれてしまう」という状況から、当時流行していた「3合飲めばつぶれる」という密造酒のカストリ酒になぞらえて、「カストリ雑誌」と呼ばれたのである。〉(本書より) エロ・グロ・犯罪・ナンセンス記事などを中心に扱うカストリ雑誌の人気は高かったと本書では述べている。私の場合は子供のくせに特に大人マンガが面白くて、そのとりこになってしまっていた。しかし、よく考えてみると、今の時代はどーだろうか。毎日のようにテレビのニュースなどで殺人事件が報じられている。あの時代よりも今の時代のほうが殺人事件が多いのではないだろうか。まさに、〈これからの日本はどうなるのか……〉と、いう日本になってしまっているようだ。ホントーにどーかしている日本である。 |
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