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評者◆ベイベー関根
近過去を舞台にした火曜サスペンス!じゃなくて、歌謡メロドラマ!
スタアの時代 3 追憶のワルツ編 第三幕
桜沢エリカ
No.3270 ・ 2016年09月10日




■本屋に行ったら、あんまり見かけない判型の本が3冊並んでたんで手にとったら、桜沢エリカの新刊ではないの。ここ20年ぐらい全然興味を持てなかった人だけど、タイトルが『スタアの時代』、帯には「昭和の大スタアの、隠された悲恋!」とあるので、へえ、今こんな仕事してるんだ、と思って買ってみたぜよ。
 奥付のページを見ると、連載媒体は『女性自身』、あ、あの違う紙を使った枠か、それでこの判型なんだ、なるほど~。いや、桜沢エリカ、90年代以降は女性誌保守本流路線で来ていたわけだけど、ここまで突き抜けたのなら、ムチャクチャ面白い! というわけでもないけど(苦笑)、むしろ応援したいです!
 その第一~三幕を飾る「追憶のワルツ編」は、なんと高倉健と江利チエミをモデルにした一大芸能史実話メロドラマ!
 だけど、高倉健と江利チエミですぐにうっとりできる層自体、今ではかなりお年を召されてる方たちだよね、若い読者をターゲットにどう攻める? と見守っていたら、いや、さすがは桜沢エリカ、なかなかやりよるぜ、若い芸能記者と超ベテラン芸能記者、というふたつのレイヤーを用意して、超ベテランの方の追憶、という入り口から攻めていくとは!
 話自体はわりと有名だと思うんだけど、高倉健と江利チエミって(もちろん作中では違う名前にしてあるよ)、健さんが無名のころに出会って、3年くらいで結婚しちゃうのね。けど、家政婦をしていたチエミの義姉が男に騙されてお金を使い込んじゃって、それが元で二人は離婚、それ以来ほぼ顔を合わせることもなく、チエミは1982年に急逝。葬儀には顔を出さなかったものの、健さんは本名で供花を贈り、会場の前に停めた車の中から手を合わせていたという……。健さんは、その後もチエミの命日には墓参りを欠かさず、独身を貫いたわけで、何つーか、あれ、目に何か入った……。
 桜沢のマンガは、特にこれといった変わったこともしないで、わりと淡々と進めていくんだけど、チエミの義姉が事件発覚後に現れるところ、それ「天人唐草」の岡村響子だろ! って感じで爆笑したなー(一方で、前回取り上げた『レズ風俗』の永田カビさんを思い出すなあ)。いや、それは単なる小ネタなんだが、第2巻での義姉が籠絡されていくさまとか、第3巻でふたりが会わなくなってからの流れを飽きさせずに読ませる手管とか、これまたさすがと感心させられたぜよ。80年代に「ニューウェーヴに筋はいらない!」みたいな感じで出てきた桜沢エリカが、ここまで「ザ・ドラマ!」な境地にやってきたんだなあと思うと、感慨深いっすね。
 若干古いネタを現代に甦らせるということでは、もう1冊、山川直人の『日常の椅子――菅原克己の風景』でも紹介しておくか。共産党を除名された昭和の詩人・菅原克己が市井の生活を謳った詩に、山川直人がマンガをつけたもので、これまたオススメっす!







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