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評者◆ベイベー関根
『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』って、まんまのようだが。
さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ
永田カビ
No.3269 ・ 2016年09月03日




■しばらく前まで「ダメ人間」みたいのがマンガでもてはやされててさ、いいのも悪いのもあるとはいえ、とにかく量が多すぎるので正直辟易してたんだよなー。生きづらいというだけのグチを読まされてもさー、やっぱそれをどこか客観的に見る視点がないとさー、とかいっても当然すぎて面白くもないわけだが、でもまあ、これ昔私小説が隆盛したようなもんなんだろうなあ。私小説が後からバックラッシュにあったように、「ダメ人間」ブームも、後から「ま、ダメなものはダメだよね、ハッ!」といわれるようになるのかもしらんが、私小説隆盛の背後にあった理論的裏づけとかがない分、かえって生き残ったりして。ま、それはそれでいいけど。
 今回はそういう「生きづらい系」の人のマンガということで、もともと『原田ちあきの挙動不審日記』を取り上げようと思っていたんだけど、うかうかしているうちに永田ルビ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』が出たので、さっさとそっちに鞍替えだ!
 なんかすげえ売れてるらしいんだよね、コレ。もともとpixiv(ネットでイラストとかあげてくサービスね)ですごい反響のあった作品らしくて、それを単行本化にあたって大幅改稿したものなんだとか。
 中身はほぼひとりごとなんだけど(笑)、高校を卒業してから、鬱と摂食障害に苦しみ、家族や他者との関係にも悩んだ28歳処女の作者が、自分のこじらせを見つめまくった挙句、「レズ風俗」に行って、なんとかポジティヴな方向に歩みだす……というもの。
 たしかに反響があったのもわかるよな。絵もきれいだし、自分に対する分析も行き届いてるように見える。そこで行き着く先が「レズ風俗」っていうのも面白い。この風俗のお姉さん、作者みたいな人をたぶんたくさん見てきたんだろうね、大事なものが何かよくわかっておられる。そのスキルに作者も救われたね。
 何つんだろ、人間にとってやっぱりスキンシップは大事だし、そのスキンシップはセックスと完全に切り離すことができないし、いわゆる風俗というサービスがそれを必要としている人に提供しているものなんだよなあ、というこれまた当然すぎて面白くもない結論をぼんやりと考えさせてくれるマンガでありました。
 あ、もうひとつ、自分のことを掘りまくってみても、それだけでは解決しない問題があって、結局最後には他人というものが必要になるんだってことな。これ、主体とか自発性ってものが、ほっときゃ出てくるものでもない、というまたしても当然すぎることとたぶん同じなんだけど、「主体性が大事」というタテマエ上、みんなあんまりそこには触れたくないままここまで来ちゃってんだろうな。だけど、そうなんでっせ。ま、ここではこれ以上ツッコまないけど、そのうちこういう話もどこかで議論されるだろうな。あと、この「性への忌避感」みたいなものも、何なんだか考えとかなあかんな。







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