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評者◆添田馨
暗黒の“安倍時代”を生きる⑤――参院選における敗北の構造
No.3268 ・ 2016年08月27日




■去る7月10日に投開票が行われた参議院選挙の結果は、自民、公明、おおさか維新などの所謂“改憲勢力”が3分の2を超える議席を獲得する結果に終わった。民進、共産などの野党共闘(反改憲勢力)については、この「3分の2」を勝敗ラインと考えた場合、その敗北は誰の眼にも明らかだった。六〇年安保以来と言われる数の人間が、安保法制に反対して国会前を埋め尽くした昨年来の政治情勢のこれが帰結点だとすれば、この参院選敗北の構造にこそ、この時代における危機の本質が最も凝集されているのだと言えよう。
 重要なのは、野党共闘がいったい何に負けたのかという、この問題の本質に関わる部分の話である。総括的に述べれば、野党共闘は自公連立の騙しの術策に敗れたのである。騙しの術策というのは、よく言われるように、政策面の争点を近視眼的な経済問題へと短絡させ、その裏に隠した改憲への意図を、政策論争の場外へと完全に排除したことを指す。
 野党共闘は、これを捉えて「争点隠しだ」と選挙期間中しきりにアピールし、改憲問題をひろく国民の間の共通認識にまで高めようとしたが、及ばなかった。
 騙しの術策を支えたのは、マスコミ報道の抑え込みや多額の費用をつぎ込んだ広告宣伝など、選挙民に余計なことを考えさせないための周到な配慮だったと言っていいだろう。投票率の底上げなど、投票行為そのものを闘争手段となしたのは野党共闘側だが、そもそも選挙民のあいだに改憲に対する問題意識を浸透させられなかった以上、期待された戦術の効果も最初から発揮されるための必須条件を欠いていたのである。
 この国の人々が支配権力に総敗北する時には、必ずこうした構造がデジャブのように現れる。知らずしらずのうちに全権が支配統治側に独占されていて、気がついた時にはもう手遅れだという毎度お馴染みのパターンがそれだ。この国ではこうした知性とは正反対の悪意が、戦わずしてつねに勝利を手にしてきたのである。







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