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評者◆伊達政保
EU離脱を巡る国民投票直後のイギリスでの力強い演奏――渋さ知らズ・オーケストラのヨーロッパツアー同行記
No.3268 ・ 2016年08月27日




■渋さ知らズ・オーケストラのヨーロッパツアーに同行し、18日間ばかり、イギリス、ベルギー、ドイツ、スイス、イタリア、スロベニア、スロバキア、ポーランドと、ミュージシャンやスタッフも含め、35人前後のメンバーで各地のフェスティバルを廻ってきた。
 まず最初のステージはイギリスのグラストンベリー・フェスティバル。イングランド丘陵の巨大な農地で行なわれる世界最大規模のロック・フェスだ。日本のフジ・ロック・フェスティバルがこのフェスを手本にしているというが、その数倍の規模だ。なにせ20万枚のチケットが出演者の発表前に、発売と同時に売り切れるというのだから。日本から個人で行くのは殆ど不可能なのだ。よって今回、オイラの一生に一度の機会かもしれないということもあって、同行したのだ。
 イギリスに着いたのは、EU離脱を巡る国民投票の翌日、飛行機の中でBBCの開票速報中継を見てきたが、離脱と確定していた。ツアーに同行するためロンドン経由で先乗りしていた金融関係の友人と合流、彼の話では、離脱と決定したにもかかわらず市内の状況は案外平静だったという。
 会場近郊の町バス(風呂のバスの語源となった町)に一泊、翌日グラストンベリーの会場に向かった。途中の広大な農地のあちこちに「離脱へ投票を」と大きな看板が立てられていた。休憩で立ち寄った農村パブで、農夫たちが昼間からビアパーティーを開いていた。国民投票に勝利した祝いだという。離脱理由に移民問題が大きく取り上げられていたが、大陸から入ってくる安い農産物も彼らにとっては死活問題だったのだ。いささか乱暴に日本で例えると、TPP反対の農協と在特会が手を組んだようなEU離脱運動だったのだ。すなわち、人と農産物に対する排外主義である。
 さて、フェスの会場は丘陵に囲まれた広大な窪地、天候不順のため一週間前は洪水に見舞われたという。よってすべて泥、長靴が必需品で、脛まで泥に嵌まってしまう。とてもあちこちのステージを見て回ることなどできやしない。出演者も車でしか移動できないのだ。オープニングの主催者挨拶では投票結果を受け、これでイギリスの民主主義は死んだとの発言があったという。演奏前のステージの巨大なバックビジョンには、離脱派の元ロンドン市長や国会議員に対する批判が写真入りでスクロールされ、ステージ下の正面にはグリーンピースの横断幕がある。渋さ知らズの演奏が始まると物凄い観客で後方など見えやしない。14年前の渋さの出演が伝説となっていたという。それにも増した力強い演奏が繰り広げられた。それはBBCでも放映されたのだ。
〓〓つづく







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