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評者◆秋竜山
生物界には車輪がない、の巻
No.3265 ・ 2016年07月30日




■本川達雄『ゾウの時間 ネズミの時間――サイズの生物学』(中公新書、本体六八〇円)に、〈第六章 なぜ車輪動物がいないのか〉と、いうビックリするような発想に驚いて椅子の上で尻が飛び上がった。このような発想が世の中にあるのだという驚きである。おもちゃとかマンガとかで車輪のついたものはあるが、車輪つきの動物が生まれたことがない!! などと、どこからそんな考えが生まれたのか。私は漫画家という職業柄、アイデアとして、そのような発想が一度もなかったことにガッカリ。
 〈ところが、まわりを見回しても、車輪を転がして走っている動物には、まったくお目にかかれない。陸上を走っているものたちは、二本であれ、四本であれ、六本であれ、突き出た足を前後に振って進んでいく。空を見上げても、プロペラ機は飛んでいても、プロペラの付いた鳥や昆虫はいないし、海の中でもやはり、スクリューや外輪船のような、回転する駆動装置をもった魚はいない。生物界には車輪がない。身の回りにある道具類は、よく調べてみると、その原理は生物がとうの昔に発明していたものばかりの中で、車輪は例外的に、人類独自の偉大な発明なんだ、と学生時代に習って、なるほどと感心した記憶がある〉(本書より)
 発想の天才は子供だろう。学校で小学生が先生に「どうして、車輪つきの動物がうまれないんですか」と、聞いたとする。先生はどう答えたらよいのだろうか。「バカなことをいうな」では、答えにはならないだろう。父親が子供に同じ質問されたとしたら。「お前はいったい何を考えているんだ。そんなヒマがあったら、勉強しろ!!」。もし、本書を読んでいたら、うまく答えられるだろう。しかし、大人というものは、もう救いようのないコチンコチンの脳ミソだから、そういう発想すら馬鹿にしてしまうだろう。 〈なぜ生物に車輪がないのか、いまひとつの説明として従来からあげられてきた理由がある。車輪と軸受けとの間は、必ず途切れていなければ回転しつづけられないが、この途切れた空間を越してエネルギーを軸に与えるには、かなり工夫がいる。つまり、回転しているものに、どうやって外からエネルギーを供給しつづけるかの問題である。〉(本書より)
 車輪つき動物が生まれない理由として、そのようなものだろうか。私のよくわからないのは、理由はともかく、生まれてくればそれなりになんとかなるものではないだろうか。もちろん進化のかていにおいてである。人間にだっていえるだろう。車輪つき人間が生まれたとする。人間が誕生する始めっから車輪つきであったらどうだろうか。人間ってそういうものだという、誰もうたがいをもたないだろう。神は己の姿に似せて人間を創造したというけれど、神がもし車輪つきであったら、人間を車輪つきにつくり上げたであろう。人間が車輪つきでないということは、神自身も車輪つきでないということか。スクリューつきの魚もいない。
 〈なぜプロペラで飛ぶ動物がいないのか〉(本書より)
 いないということは、それなりの理由があるだろうけど、理由などというものは、あってもなくてもいいものである。







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