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評者◆小嵐九八郎
小説家も読んだ方が絶対によい
時代の危機と向き合う短歌
三枝昂之・吉川宏志編
No.3261 ・ 2016年07月02日




■偶然なのか、必然なのか、アベ政権ができた頃から、耐震装置の偽装、杭打ちの虚偽隠し、東芝の嘘の決算報告、化血研のいい加減、三菱自動車の騙しと、尋常ならざる質と規模の“詐欺”事件が続く。オリンピックの東京開催もきな臭い匂いが漏れ出てきている。
 ま、そもそも、今年施行の安保法制も、憲法なんつうのも捻じ曲げ、実質的臨戦状況へと突入させ、“仮装敵”の実物大の力と怖さも知らず、さて、日本はどこへ行くか。直感ではパワーなき瑣末主義へと走っていて“先開発”では真っ先に滅ぶような。
 その安保法制の去年の国会での議会へ至るまでの過程の原発問題、特定秘密保護法について危機感を持った歌人の三枝昂之氏と吉川宏志氏らがシンポジウムを昨年九月京都と東京で持ち、その記録集が出た。正式には『時代の危機と向き合う短歌』(青磁社、1500円+税、三枝昂之・吉川宏志編)だ。
 三枝昂之氏の大逆事件におけるジャーナリズムの自主規制を歴史的な教訓とする現在の傾斜については、ほんのちょぴっとだけ今に関わる俺にも深刻なテーマをよこす。重いなあ。
 あれこれ排外主義と右翼に攻撃された「朝日新聞」の歌壇選者の永田和宏氏の《権力はほんとに怖いだがしかし怖いのは隣人なり互ひを見張る》の歌も載っている。ま、バスに乗ると座席の前に「まず疑え」とステッカーが貼ってあり、振り込め詐欺への警察による訓戒にどきりとする俺ではあるけれど。
 吉川宏志氏は、防衛相の昨年八月の「弾薬は武器でないから、他国に提供可能だ」の言に衝撃を受け、「想像力が欠如した『言葉』に嫌悪感を覚える」と言い、「見えないものを、ありありと想像する。それは文学の重要な力の一つだ」と記している。なかなか、見てる。
 《三割がPTSDといふ帰還兵 残る七割の「正常」思ふ》と伊藤一彦氏の歌もある。
 歌を作るとか時を語る場合の歌人の偽善など俺自身が悩むけど、直截的で反省的で、小説家もこの本は読んだ方が絶対によい。







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