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評者◆秋竜山
みんな私が悪いのよ、の巻
No.3260 ・ 2016年06月25日




■ヒトは言葉によって自分を責める。その昔、「みんな私が悪いのよ」なんてのが流行った。これだけではちっとも面白くない。面白くないものが流行るわけがない。「みんな私が悪いのよ。郵便ポストの赤いのも、みんな私が悪いのよ」。別に、あなたが悪いから郵便ポストが赤いのではありません。郵便ポストは昔から赤いのです。それを自分の責任だとするのが笑わせる。いつの間にか郵便ポストが赤いとは限らなくなってしまったが、そんな色が変わってしまった郵便ポスト、「みんな私が悪いのよ」。記憶も遠くなる昔、私は三、四年、郵便局員として、世のため人のためにと、窓口に座ったり手紙を区分したりしていた。ちょうどその頃であったから、「郵便ポストの赤いのも、みんな郵便局員の私が悪いのよ」なんて友人に手紙したりした。「そーだ。その通りだ」という返事があった。私がいまだにわからないのは、日本から伝統ある郵便局が無くなってしまったことと、赤い郵便ポストが姿を消してしまったことである。いったい誰のせいだ。「みんな私が悪いのよ」という責任を感じてほしいものである。と、いっても、それが時代というものか。
 片田珠美『自分を責めずにはいられない人』(PHP新書、本体七八〇円)では、どこにでもいる、みんな私が悪いのよ、と自分を責める人について分析している。
 〈自分を責めずにはいられない人はどこにでもいる。そのために落ち込み、自分は無価値だと悩んで、われわれ精神科医のところにやってくることも少なくない。〉(本書より)
 〈第1章 「自分を責めてしまう人」とは〉〈第2章 「自分はダメだ」と思う三つの要因〉〈第3章 罪悪感の由来〉と、第6章まで続く。
 〈「自分はダメだ」というのは、あくまでも本人の思い込みにすぎない。他人の目には、それなりにきちんとやっていて、そこそこ成功しているように見えても、本人が「自分はダメだ」と思っていることだってある。これは、比較、理想化、期待の重圧の三つの要因によることが多いようだ。
 その1 比較――いつも、誰かと比べられて育った。
 その2 理想化――「もっとうまくやれるはずだ」という強迫観念。
 その3 期待の重圧――「条件付きの愛」しか得られない。〉(本書より)
 また昔の話になってしまうが、あの当時、郵便局が日本から無くなってしまうことになってしまった時、ハッキリいって国民は何がおこっているのかサッパリわからなかったのではなかろうか。わからなかったのは、みんな私が悪いのよということか。「みんなお前が悪いのよ」と、いいたがるヒトもいる。そーいう性格からか、郵便ポストが赤いのも、みんなお前が悪いのよ!! と、すべて他人のせいにしてしまう。そういえば、大笑いをしてしまった大政治家がいた。「私はうそを申しません」と、いった。と、いうことは、もうすでにうそをいっているではないか。みんな私が悪いのよといってうそなみだを出す。そのなみだにみんなだまされてしまうのである。







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