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評者◆添田馨
暗黒の“安倍時代”を生きる③――革命思想としての立憲民主主義
No.3259 ・ 2016年06月18日




■現在、国内各地で起こっている安倍政権への広範なカウンター行動は、その本質において革命運動としての性格をすでに帯びはじめている。政治体制や経済体制の転覆が叫ばれているのではない。しかし、安倍政権そのものと、この政権下でなされた解釈改憲や安保法制など無法一切の破棄が目指されている点において、きわめて特異な“革命”が、わが国では進行しているのだと言っていい。
 それは、かつて吉本隆明がその可能性について言及したあの「革命」とも違う。吉本は、国民が消費活動を手控えれば、政権は自らを維持できなくなるのだと語った。武器はその場合、大衆の消費行動であった。個人消費がかつてなく冷え込んでいる現状は、明らかにその潜在的動機を準備したとは言える。だが、現在進行している“革命”の本質は、それとも微妙にずれている。最も特徴的なのは、選挙での投票がその基本戦術に据えられたことだ。武器は、あくまで有権者個々人の主体的な投票行為なのである。
 この“革命”をコアの部分で牽引している思想には、まだ明確な呼称がない。だが、あえて名づけるとすれば、それは立憲民主主義の防衛以外にあり得ないだろう。二〇一〇年代も折返点を過ぎた日本で、こんな当たり前のことが政治革命のイデオロギーになり得るなどとは、いったい誰が想像できたか。
 この運動が、学生や主婦、知識人や職業人といった無党派の個人を起点にし、大学や組合ひいては政治家やその党派までをも糾合した多様な階層によって担われている姿は、〈草の根からの抵抗〉と呼ぶに値するこの“革命”の、まったく新しい戦闘布陣の誕生を告げている。
 東西冷戦が終結にむかった一九八〇年代後半、東ヨーロッパ諸国で旧共産政権を瓦解させた原動力は、一般大衆が抱いた民主主義への熱い希求であった。同じくいま、無法が支配する暗黒の安倍時代だからこそ、私たちは以前にもまして一層強く、それを過激に希求するべきなのだ。
――つづく







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