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評者◆秋竜山
ロダンの「無意味に悩む人」、の巻
No.3257 ・ 2016年06月04日




■ロダンの「考える人」が、どこからみても本当に考えているようにみえてくるから不思議だ。あれがもし、居眠りしている人、という作品名がつけられていたら、誰もが居眠りしている人にみえてくるだろう。一人として、考える人にはみえてこないと思う。そして、もし、考える人ではなく「考えない人」という題名がつけられていたとしたら、誰もが考えない人にみえてくるはずである。題名というものは、そんなものであるというと叱られるだろう。「考える人」は、今日もまた、無言で、あの格好で考えているだろう。それを考えると、なにやら、さびしいものを感じてしまう。とは、いうものの、つくづくいい題名をつけたものだと感心してしまう。人間にとって考えるということは生きるということであり大テーマであるからだ。考えなくなったら人間廃業である。ロダンの「考える人」をみて、いったい何を考えているのだろうか。何を考えているのか? を考えているのか。
 本多時生『考えすぎない』(アルファポリス文庫、本体六〇〇円)。本書の、「考えすぎない」とは、
 〈必要以上に考えないことです。小さいことはその場で一瞬考えるだけですませばいいのです。ちょっとしたことで“くよくよ”していることがないでしょう。(略)自分は小さいことで“くよくよ”“イライラ”することがあると思う人は、何かを考えてイヤな気もちになった時に、「小さいことじゃないか?」「考えすぎではないか?」と自問してみてください。そうすれば、「小さいことだ」「考えすぎだ」と気づけることがあるはずです。〉(本書より)
 とはいうものの、イライラすることが多過ぎる。家の中にいればイライラしてくるし、一歩外へ出れば余計イライラしてくる。人の多い駅などへいくと、イライラ人間がひしめいている。頭の上にイライラという文字を浮かべている。そして、何かにつけてイラついてくるのである。ちょっとのはずみであやまって足をふんずけたりすると、「バカヤロー」と、どなられる。どなられるどころか、ナイフでブスリとやられかねないのである。そーいう自分もイライラしている。いつバクハツするか、自分で自分がわからないくらいである。いっそのこと警察にマイクで呼びかけてもらいたいものである。いつだったか、群集のスクランブル交差点での呼びかけのように、お願いしたいものである。「イライラしているお気持はよくわかります。警察官である私たちもイライラしております。どーぞイライラの皆様、イライラをおしずめください」。そんなマイクの呼びかけで少しはイライラ気分もやわらぐかもしれないだろう。余計イライラを増長させかねない。
 〈「考えるのはいいこと、考えすぎは苦悩の元」悪いのは“すぎる”ことであって、“考える”のはいいことです。ただし、ヘタに考えずに“よく考える”ことが大事です。ヘタな考え方の第一は、無意味に悩むことです。〉(本書より)
 そーだ。あのロダンの「考える人」を「無意味に悩む人」としたらどーだろうか。その前に立って、「こーいう人にはなりたくないものだ」と思えたら、あの作品ももっと意義深いものとなるだろう。







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