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評者◆小嵐九八郎
中身が熱いのに易しい――『9条改憲阻止の会 10年の歩み』(本体九二六円・世界書院)
No.3257 ・ 2016年06月04日




■あるブックレット、つまり小冊子を捲ったら、巻頭近くに「60年安保の友がらよ/いよいよあの世が近づいた/仲間の数が減ってきた/閻魔がおいでと待っている」という詩が目に入った。俺は60年安保には高校一年で関わりのない世代だが、この詩のふてぶてしいのにどことなく哀切な感じに「おや」となった。もっとも、続く詩は、やはり我らの世代にも引き継がれたアジ調で、うーむ、政治や闘争と抒情の結合は難しい。成功したのは西田佐知子さんの歌う『アカシアの雨がやむとき』、福島泰樹氏の歌集『バリケード・一九六六年二月』、道浦母都子さんの『無援の抒情』ぐらいで少ない。でも、この小冊子の詩の作者は「昨年喜寿」とあり、この挑戦魂は嬉しくなる。あれ、作者は下山保氏とどこかで確と聞いた先達だ。タイトルは「新9条の詩」だ。
 それでこのブックレットを読むと、皆さん高年齢なのだが、四、五年前に首相官邸前で会った人人、去年、国会前で一緒に声を上げた人人の共通性と底を持ち、中身が熱いのに易しい。『9条改憲阻止の会 10年の歩み』(9条改憲阻止の会編、世界書院、本体926円)がこれ。ま、当方の仕事場は首相官邸や国会へは二時間半かかる遠さ、その上、老いも重なり、あんまりきちんと馳せ参じることができず「済みませーん」の心があり、どうしても丁寧に読んでしまった。
 一番に迫る力があったのは「経産省前テント裁判 陳述書」(控訴人の一人、渕上太郎氏が記している)で、自身の体験から、原子力平和利用の騙しの歴史、科学的立証、テントの道義性と、これまでのさまざまな論議をきっちりと整理している。適度の情と冷静さがあり、大学や職場でのでかい武器になりそう――うーむ、俺の時代錯誤かとも思うけれど、それほど説得力に満ちている。
 それと、去年、いや、今年も節となる戦争法案を巡る総括の文「展望を切り開いた闘い」(えっ、あの松平直彦氏が書いている)で、今後について「立憲主義の回復」と「『第三極』の政治勢力の打ち立て」を唱えている。ここいらは、きっちりと現状分析と論証が必要なような。遡れない地平なので慎重に、大胆に。







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