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評者◆秋竜山
無人島マンガはイメージの世界、の巻
No.3253 ・ 2016年04月30日




■本来なら、孤独とか寂しさの中にいるはずなのに、そんなことどこ吹く風とばかりに、第一にそんな状況など忘れてしまっている。そして、生活している。それが、無人島マンガそのものである。無人島マンガにおける人間たちは、ナンセンス・マンガ人間たちばかりのようだ。無人島マンガの面白さはそこにある。森博嗣『孤独の価値』(幻冬舎新書、本体七六〇円)を書店で見かけた時は〈孤独の価値〉を〈無人島マンガの価値〉と、読んでしまったほどであった。無人島マンガ狂の私としては、ちっとも不思議ではなく、正しい読み方でもある。〈孤独の価値〉とは、孤独というものがいかに価値あるものであるかの証明である。重要な課題でもあるということだ。とはいえ、最初に述べたように、無人島に住むナンセンス・マンガ人間は孤独のことなど頭にないということだ。
 〈孤独を怖れる人が沢山いるようだ。特に、子供や若者に多いように見受けられる。そんな話を一所懸命力説する人や本にも幾度か出会った。しかし、僕が実際に会って話をした人で、孤独に悩んでいたという例は少ない。いても、かなり軽度なレベルだった。このことについて、全体的、平均的なデータがどうなのかは知らない。ただ、僕がきいた範囲内では、何故、孤独がそんなに恐いのかと尋ねると、ほとんどの人は、孤独が寂しいからだ、答えた。〉〈いずれにしても、寂しいという感情は、「失った」と、いう無念さのことだ。また、その失ったものが、「親しさ」であれば、それがすなわち「孤独」になる。〉(本書より)
 無人島マンガはイメージの世界である。だからイメージがわかない人は「そんな、マンガの島に人間が住めるわけがない」と、いう。孤独や寂しさの以前の問題であって、まず話にならない。無人島に漂着した人間が、まず最初に何をするのか。これも、このマンガの重要な面白さである。無人島になぜやってきたのかも重要である。無人島にあこがれてやってきた人など願いがかなったことで、よろこびいっぱいということになるだろう。「無人島マンガ」といえば、よくする質問であったり質問されることであったりするのが、「あなたが無人島へ一つのものを持っていくとしたら何を持っていきますか?」。昔、私は日本公演に来日した外国の踊り子に仕事で取材したことがあった。その時、踊り子が即座に「ハイ!! 〈つけまつげ〉を持っていきます」と、答えた。無人島に住むナンセンス人間として最高の答えであるだろう。彼女が答えた後、二人で大笑いした。誰もいない自分だけの島で〈つけまつげ〉をして、どーするつもりだろうか。「どのような本を持っていきますか?」と、いうのも有名な質問である。いいとこを見せようと、わけのわからない、むづかしい本の名前をいったりする。もちろん持っていっても読めるわけがない。読めない本はどうすればよいのか。毎日、ページをめくって「孤独感」と「寂しさ」を味わえばよいだろう。考えてみれば、無人島へ持っていくこれ以上の素晴らしい本はないだろう。







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