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評者◆秋竜山
ピカソ「笑う女」が観たい、の巻
No.3250 ・ 2016年04月09日




■ピカソが「泣く女」を描き上げた時、フーッと長い息をふき終え、ひとこと「終わった」と、つぶやいたとか、つぶやかなかったとか。誰もが、あの画をみて、「ひどい顔だ」と、思うはずである。あの、ひどい顔こそ、女の本質であったのだ。なんて、すぐ勝手に想像したがるのであるが、連作を完成させてほしかった。「笑う女」である。もっと、ひどい顔で。連作は次々とうまれる。怒った女、となると、どーなってしまうのか。女編の後は男編にするとか。これらの一連の作品はもうピカソ以外には描けないだろう。全部ピカソのパロディになってしまう恐れがあるからだ。
 石川恭三『一読、十笑、百吸、千字、万歩――医者の流儀』(河出書房新社、本体七八〇円)に、〈十笑〉というのがある。〈十笑〉とは、どういう意味なのか、トッサにピカソの「泣く女」が頭に浮かんだ。つまり〈十泣〉という、実に他にありえない連想であった。
 〈中高年の人に対して、健康維持と認知症予防の心得として、「一読、十笑、百吸、千字、万歩」を生活習慣の中に組み入れることを長年にわたり推奨している。このことは第二章でも解かれているが、一読(一日に一度はまとまった文章を読む)、十笑(一日に十回くらいは笑う)、百吸(一日に百回くらいは深呼吸をする)、千字(一日に千字くらいは文字を書く)、万歩(一日に一万歩を目指して歩く)のことである。この「一読、十笑、百吸、千字、万歩」の生活習慣は「老い」の容を整えるのに有用だと信じて心がけている。〉(本書より)
 一日に十回くらいは笑うというが、今まで自分が一日に何回くらい笑っていたのか数えたことがないからサッパリわからない。十回くらいは笑っているだろうと思ってみたものの、一日限りではなく毎日ということになると、これは大変なことであると思った。一日十回笑う。問題は何を笑うかだ。江戸時代の川柳にあったりするが、ひとり者が部屋でブッと屁をひったとして、おかしくもなく笑えもしないということだ。面白くもないものを笑えるわけがない。そんなことを考えてみると、笑えるということが自分の身辺に転がっているのか、いや皆無である。テレビでお笑い番組を観て一緒に笑うなんて、頭がどーかしているとしか考えられない。では、ワイド番組などにチャンネルをまわしてみても、最近は特にひどい。ひどすぎる。殺人のニュースばかりである。他人の不幸を笑うということは人間のもっともザンコクな心理とばかりに、そんなことを笑ってどーなるというのだ。いずれにせよ、笑いというものがこの世の中に実に不足しているか、さがしてみるとすぐわかることである。笑いなんてものはなんにもないんだから、ね。一日十回を目標に笑おうとして、三十日では、三百六十五日では、いったい何回笑いを見つけなければならないのか計算しただけで気が遠くなってしまう。動物は笑わなくて済むという。一日一回も笑わない。一生一回も笑わない。それで、いいとされている。どーして人間だけ笑わなくてはならないのだろうか? なんて口に出して言ったりすると、「バカ」といわれるだけだろう。







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