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評者◆秋竜山
嗚呼テレビ文化、の巻
No.3247 ・ 2016年03月19日




■よく考えてみると、ヒトは生まれたその年のお正月元旦をやっていないということである。元旦なしで年末である大晦日を体験するわけだ。つまり大晦日の夜のNHK紅白歌合戦をテレビで観てから、次の年の新年明けのお正月番組を見る。そういう順序であるから、いかに紅白の持つ意味というものは重要であるようなないような。人生の出だしから変である。佐藤智恵『テレビの秘密』(新潮新書、本体七四〇円)に、NHK紅白歌合戦のことが書かれている。分析されている。
 〈「第65回NHK紅白歌合戦」(2014年12月31日放送)の視聴率は、前半35・1%、後半42・2%と好成績、相変わらずの強さを見せました。この時代に40%を超えるなんて、信じられないほどの高い視聴率ですが、それでも40%を超えないと「失敗」と言われてしまうのが紅白です。〉(本書より)
 そんなこと切りがないことだ。もし50%を超えていたら、50%超えないと「失敗」と言われてしまうことが紅白だということになりかねない。はっきりいって40%の視聴率がどれほどのものであるか国民はわかってはいないだろう。テレビ評論家などが「すごい数字だ」と、いうから国民も「すごい数字だ」ということをいってしまう。よくテレビで街頭を歩いているヒトに、アナウンサーが「今の政治をどう思いますか」などと質問すると、十人中十人が同じようなことを答える。「ひどいものです。本来の政治とはこーいうものではありませんよ。そもそも、日本国はどーかしてます。政治がわるいから政治家がわるくなるんです!! いや政治家がわるいから政治がわるいんです。まてよ!! その逆かな。まあ、いずれにせよ、日本の政治は最悪ですね」なんて、差し出されたマイクにむかって、同じようなことをいう。それも、テレビのワイドショーなどで、政治評論家がいっていた、おなじコメントであったりする。テレビ視聴率もおなじようなものである。テレビ評論家が「大成功の視聴率です」と、いえば、国民はおなじことを間違いなくいうだろう。「失敗」と、いえば、国民はおなじようにいう。それがテレビ文化というものである。
 〈40%を超えないと「失敗」と言われてしまうのが紅白です。〉(本書より)
 それが紅白の怖さというものである。
 〈そんな厳しいハードルを前に、制作スタッフは、視聴率を上げるために、どんな努力をしているのでしょうか。2014年の紅白歌合戦を戦略面から分析してみたいと思います。(略)紅白が主たる視聴者ターゲットを40代から50代の男女にしぼっていることが分かります。特に40代は人口も多く、テレビを熱心に見てくれる世代。ここを押えておくことが重要なポイントとなります。〉(本書より)
 特に40代は人口も多く、とありますが、これが怖い。人口の多い40代の発言力がもっとも高くなるということになる。40代の人たちというのはどのようなヒトたちなのか。心配にもなってくる。変なことをいわなければよいのだが。質より数の力ほど恐ろしいものはない。お年寄りに聞いてみた。「紅白の未来は?」「やっぱり、エンカでしょう」と、いった。まるで話になるような、ならないような。







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