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評者◆高坂浩一(堀江良文堂書店松戸店)
仕事もプライベートも全力で楽しむぞ!
幹事のアッコちゃん
柚木麻子
No.3245 ・ 2016年03月05日




■読むと元気になれるビタミン小説と言われている人気シリーズの三作目。
 『ランチ』、『3時』ときたので『ディナー』かと思ったら『幹事』でした。三文字+アッコちゃんというタイトルにこだわったからでしょうね。
 このシリーズは百七十三センチの黒髪おかっぱ頭で威圧的なアッコちゃんが、社会人なら経験をしたことがあるちょっとした問題を、食を絡めながら五日間という短い期間で「できすぎでしょ」とツッコミを入れたいぐらい小気味良く解決に導いていくスタイルが魅力です。シリーズ三作目にして初めて収録作品すべてアッコちゃんの話になっています。
 今作では忘年会の幹事を任されたものの、食事をコミュニケーションツールに置き換えることを好まない、他人と一定の距離を置く若手男性社員、なぜかアッコちゃんに敵意を抱く女性ライター、プロジェクトのチームリーダに抜擢されたことで時間の使い方に苦労する元部下である美智子たちの問題を解決に導いていきます。
 問題を解決していく過程で「だいたい、誰にも嫌われない人なんて気持ち悪いじゃない」や「なんとなく、に勝るものはなしよ。すべては直感よ。自分が好きなものじゃないと、みんなも楽しめないんじゃない?」など自己肯定を促すセリフが多く散りばめられていて、読んでいるとポジティブな気持ちにさせてくれます。
 シリーズ一作目の『ランチのアッコちゃん』では雲と木社の部長と契約社員の関係であったアッコちゃんと美智子。今作では東京ポトフ&スムージーという会社で二十四人の社員を抱える社長と、大手貿易会社・高潮物産の正社員になり、当時出会った男性と夫婦になっているといった時間の流れと環境の変化はあるものの、上司と部下……というより師匠と弟子の関係性が変わらず続いているところも魅力のひとつです。
 しかし、その関係性も本書第4話「祭りとアッコちゃん」で変化の兆しを見せる。高潮物産が東京ポトフ&スムージーに買収の話を持ちかける。その交渉役に美智子を抜擢することによって二人の関係性や東京ポトフ&スムージー、そしてアッコちゃんに少なからず変化がおきる。そこら辺は本書を読んでいただきたい。二人のこの後が気になるなぁ。という訳で、「仕事もプライベートも全力で楽しむぞ!」という気持ちにさせてくれる本書は、どちらも充実している人は勿論、仕事で悩んでいる人やこれから社会に出る人にぜひ読んでいただきたいシリーズなのです。
 そうそう、『ランチのアッコちゃん』から読んでいる人には『ゆとりのビアガーデン』のレミ☆レミが今作に出てくるところも注目ですよ。







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