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評者◆ベイベー関根
日本が誇る「ゲイ・エロティック・アーティスト」、初の一般誌進出が大きな話題に!
弟の夫 第二巻
田亀源五郎
No.3245 ・ 2016年03月05日




■まだあんまり話が動き出してきてないなーと思ったんで、1巻の時点では取り上げなかった田亀源五郎『弟の夫』だけど、なんかエラい賞とかもらっちゃったらしいじゃん!(第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞)ちょっと早すぎんじゃないの!? とは思ったけど、まあよかったよ、評価される分には。
 離婚して、娘の夏菜とふたりで暮らしている弥一のところに、ある日クマのような風体のカナダ人、マイクが訪ねてきた。彼は、弥一の弟、涼二とカナダで結婚していた「義理の弟」なのだ。弥一の家にしばらく滞在することになったマイクと、彼になつく夏菜。その様子を苦笑まじりに眺める弥一。しかし、そこから日常の風景が少しずつ変わって見え始める。日本という社会が、そして自分自身が見ないようにしてきていたさまざまな歪みが、しだいに露わになってくる……。
 田亀先生は、もともとガチでハードゲイSM漫画を描きまくっていた、その道の巨匠。いうまでもないけど、当時から絵はめっちゃめちゃうまかった。『嬲り者』、懐かしいなあ……(何がや)。
 今では「ゲイ・エロティック・アーティスト」として、海外でも翻訳が出たり、個展を開いたり、コンヴェンションに参加したりと世界的に活躍している田亀先生、今でもガチムチ男を描かせたら、世界一! その片鱗は1巻のカバーを外すとちょっとだけ見えることになっている。だけど、ウケちゃった後に出た2巻だと、そういう遊びも許されなくなったみたいで、これはちょっと残念(苦笑)。一度、ある媒体でインタヴューさせてもらおうと思ったんだけど、そこまでたどりつかなくて、これも残念だったなー。
 『弟の夫』は、初の一般誌連載ということもあって、田亀先生も慎重に構えているせいか、話のテンポはやや緩め、描写もかなり控えめ(そりゃそうだ)。まあ、次々に社会の矛盾が可視化されてくるわけだから、これくらいのペースでないとすぐお腹いっぱいになっちゃうんだろうな。
 ゲイが特別な存在ではないこと、だけどいわゆるふつうの人にとって常識になっていない部分がいろいろあるってことについて、作中でじっくり語ってくれてるので、読む側もじっくりつきあっていきたいね。
 個人的には、マイクを訪ねてくる中学生のゲイ少年一哉くんが、それまで溜めこんできたものを吐き出すとき、思い余って泣き崩れるシーンには、やっぱりもらい泣きしちゃったなー。
 あと、せっかくの機会なんで、もひとつホモネタをプッシュしておくと、熊田プウ助はよい! 『熊田プウ助のつれづれ駄ホモ暮らし』『世界一周ホモのたび』シリーズから、最近の『本日もおひとりホモ。』『GoGo!! おひとりホモ』まで、あれこれエッセイ漫画を発表してるんだけど、どれもかすかなエグ味が喉にひっかかって面白いんだよなー。というか、どうなっちゃうの、プウ助先生!? というわけで、とりあえず読んどいて!







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