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評者◆小嵐九八郎
人類と動物の関係を勉強したい人へ
しあわせになった猫 しあわせをくれた猫
佐竹茉莉子
No.3245 ・ 2016年03月05日




■野坂昭如氏が亡くなり、去年の暮れは『エロ事師たち』、『火垂るの墓』、『骨餓身峠死人葛』を葬いの思いとして読み、すげえ純文といわれる純文の極北の更に果てと知り、かなり身心が強ばり、畏り、涙で涸れ果てた。だから、正月はソフトで気楽で、そこいらに寝っ転がっている話の本で過ごすことにした。
 ところで、“招き猫”って本当だと思いますかね。我田引水とゆうか、思い込みとゆうか、宗教がかったと記したら人類の切実にして大切な宗教に対して済まないけれど、俺は、そう信じている。
 一九八五年、ちゃんとした労働をしていないので生活が苦しく、その上、阪神タイガースが弱虫で悲しい時、それでも通ったスナックの美しいママから当時のタイガースの模様に似たトラジマの子猫を「貰ってね、良いことが起きるわよ」と押しつけられ、かみさんが大の猫嫌いと知りつつ飼い始めた。
 そしたら、いきなり阪神タイガースは強くなりバース・掛布・岡田の連続ホームランなど出てきて、ついには日本シリーズまで制圧した。それで、このタイガースと猫の絡んだ処女小説を一番マイナーな小説誌に応募したら佳作に入り、処女長編のノベルスも猫について記したら大手の出版社が出してくれ、貧乏からの、以後の短い年月としても、脱出ができた。
 というわけで、正月の一番の本は『しあわせになった猫 しあわせをくれた猫』(佐竹茉莉子著、辰巳出版、本体1200円)だった。
 野良猫、自由猫、漁港の猫、山野に棲む猫、保健所で“処分”寸前の猫、喧嘩ばかりの猫、病や“障害”を持つそこいらの猫の話が、短い話やルポやエッセイっていいと初めて知ったけど、あっさり、ほんわか、時に人間の今をも教え、なかなかなのだ。
 それに、何しろ猫の写真が、甘え、きょとん、驚き、警戒、仲良しと実に、実に、表情と姿態が豊か。年季が入っている。愛情が濃やか。一瞬を、外していない。猫嫌いも猫好きも、人類と動物の関係を勉強したい人は是非に。今は猫好きのかみさんもおすすめ。







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