書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります

【重要なお知らせ】お問い合わせフォーム故障中につき、直接メール(koudoku@toshoshimbun.com)かお電話にてバックナンバー・定期購読の御注文をお願い致します。

評者◆ベイベー関根
『三月のライオン』のことはあえて書かなかった(笑)。
将棋の渡辺くん 第一巻
伊奈めぐみ
No.3244 ・ 2016年02月27日




■よーしじゃあ、これまで出してなかった引き出しを使うかな!
 実は………将棋好きなんだよね。
 子供のころに指してたけど、たいして強くならないまま小学生いっぱいくらいで諦めちゃって、その後ずいぶん将棋から離れてたんだけど、例の電王戦ね、将棋ソフトとリアル棋士がガチ勝負をする企画、あれで有名になった某ソフトの開発者が高校の同級生だったもんで、そっからまたにわかに将棋熱が再燃、いやー、いま面白い棋士いっぱいいるなーとか思って、意外にちょこちょこ動向をチェックしてたりして。
 と思っていたら! こんな方向から、来たね、この連載のネタが! ズバリ、伊奈めぐみ『将棋の渡辺くん』1巻だ!
 永世竜王の資格をもつ棋士、渡辺明の日常を奥さん(お兄さんもプロ棋士、マンガは素人)の目から描いたエッセイ漫画で、もともとネットで奥さんが勝手に描いて上げてたのを、『別冊少年マガジン』の編集者が見つけて連載にしたらしいんだけど、いや、これがいろいろ絶妙なんだよ!
 何がって、まず相手が渡辺明ってところ(笑)。いや、作者が奥さんだからしゃあないんだけど。なんせあだ名が「魔太郎」だからね。マジでそっくり。本人はマンガの魔太郎とは違って、ふつうに明るいキャラなんだけどね。大盤解説とかもすごい面白いし。
 で、負けるときは異様にあっさり負けたりするし(笑)。何だろなこの人、と思ってたら、やっぱりタダ者じゃなかった、なんと家ではぬいぐるみさんたちと仲良しなんだって!
 で、予想のつくことではあるけど、ふつうの人のできることがいろいろできない。服を買うとか。鉛筆削るとか。虫が怖すぎるわりに、ネズミの死体とかは平気だったりとか、いやー、人間ってホント面白い、というか奥深い……。
 将棋を職業にしてる棋士たちの生態がわかるという点でもタメになるねー。ダンディな中川大輔八段が、渡辺くんの服を買うために、100万円おろさせて、奥さんと3人で伊勢丹へ行くくだりとか、大好きだ!
 この作品、連載されてるのが『別冊少年マガジン』ってとこがミソだよね。青年誌とか4コマ誌とかだとこの味は出ないし、生きない気がする。オトナになって将棋が好きな人って、今だとかなりマニアックに見られるじゃない? 棋士がテーマってだけで、予防線がよけいに必要になったり、さらにマニアックなツッコミとかが要求されそうなところ、コドモは純粋に将棋が好き、だけでいられるから、渡辺くんのキャラがまんま生かせるんじゃないかなー。
 まあ、あといっちゃなんだけど、ふつうは完全にいじめられっ子キャラだよね、渡辺くんって。だけど、そういう子が何か打ち込めることを見つけて、自分の世界で楽しんでいられるってことが、やっぱりある種の子には希望に見えるだろうと思うな。よかったなあ、渡辺くん!







リンクサイト
サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 マチズモを削り取れ
(武田砂鉄)
2位 喫茶店で松本隆さんから聞いたこと
(山下賢二)
3位 古くて素敵なクラシック・レコードたち
(村上春樹)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 老いる意味
(森村誠一)
2位 老いの福袋
(樋口恵子)
3位 もうだまされない
新型コロナの大誤解
(西村秀一)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約