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評者◆秋竜山
コ、コ、コロンブスかロビンソンか、の巻
No.3240 ・ 2016年01月30日




■水村美苗『増補 日本語が亡びるとき――英語の世紀の中で』(ちくま文庫、本体八八〇円)で、
 〈一七八九年、フランス人は、やがてはヨーロッパ諸国を近代へと導くことになるフランス革命を起こした。王制を敷いていた近隣のヨーロッパ諸国は、怯え、フランスにこぞって戦争をしかけた。その結果、ナポレオンが台頭し、続々とナポレオン戦争を戦うことになった。そして、一八〇三年、そのナポレオンが、イギリス軍を牽制する軍資金を確保するため、北アメリカの中心部を占めていたフランスの領土を、アメリカ合衆国に売ってしまったのです。一エーカー三セントという値段です。これが、今でもアメリカ人が笑みこぼさずに語れない「ルイジアナ・パーチェス」です。当時まだ大西洋側に小さくかたまっていた合衆国は、「ルイジアナ・パーチェス」によって一挙に倍の大きさになり〉(本書より)
 この文章を読みながら、私の頭の中にはまったく関係ないような空想が頭をもたげた。「無人島マンガ」である。コロンブスがアメリカ大陸を発見した。そして、ロビンソンが無人島を発見した。コロンブスのアメリカ大陸の発見がその時は、まさか世界一の国になるとは夢にも思わなかっただろう。ロビンソンが無人島を発見した時も、まさか無人島マンガなどという世界的なテーマになるとは夢にも思わなかっただろう。コロンブスは原住民に大歓迎された。ロビンソンは人影のない淋しい上陸であった。しかし、結果として世界的に名を残す人物となったのである。かつて、愛読書ランキングでロビンソン・クルーソーが第一位であったことがあった。無人島へのあこがれが人気のヒミツであろう。もし、ロビンソンがコロンブスのような新大陸であるアメリカの発見であったとして、どうだったんだろうか。ロビンソンの名が後世に残るとは考えられない。有名な外国マンガ家アダムスのひとこまマンガに無人島マンガがある。アメリカ大陸の形をした無人島に漂流者が漂着したというマンガである。漂着者はコロンブスか、それともロビンソンなのか。さて、どちらにしたら面白いだろうか。〈ナポレオンが、イギリス軍を牽制する軍資金を確保するため、北アメリカの中心部を占めていたフランスの領土を、アメリカ合衆国に売ってしまった〉という。無人島を発見したロビンソンではなく、ナポレオンであったら、その無人島の運命やいかに。どこかの国に売ってしまったかもしれない。そんなことを考えると、ナポレオンが無人島発見に力をいれて、それを売りに出したらどーだったんだろうか。
 〈たとえば、もし、ペリーが艦隊を率いて浦賀に入港したあとアメリカに南北戦争がおこらなかったとする。そして、まさに官軍賊軍開国攘夷入り乱れたままの混乱状態が続くうちに、日本がフィリピン同様、アメリカの植民地となっていたとする。ありえないことだと思う人もいるかもしれないが、近代史を前に想像力を働かせれば、ありえなかったことではなったくない。〉(本書より)
 もしペリーがナポレオンだったら、植民地日本をどこかの国へ売りとばしたかもしれない。じょうだんじゃないよ!! まったく。







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