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評者◆添田馨
歴史の還流に向きあう①――「新・映像の世紀」は現在への黙示録(アポカリプス・ナウ)である
No.3238 ・ 2016年01月16日




■12月20日放送のNHK「新・映像の世紀 第3集」は実に濃い内容だった。テレビ番組を観て鳥肌が立つという経験は、ほんとうに久しぶりだった。1930年代の前半から1945年までの世界史が今回の対象だが、私が驚愕したのは、それがまぎれもなく現在への黙示録(アポカリプス・ナウ)として制作されているとしか思えなかったからだ。
 見どころ映像が満載のなかで、飛び抜けて印象的な場面があった。ナチスの強制収容所が連合国側によって解放されたとき、そのあまりの惨状に声を失った彼等は、この事実をなによりもドイツ人に見せなくてはならないと考え、実際にそれを見せた。その理由は、後世になって「ガス室なんかなかった」と言いだす奴が現れないようにするためだった。間違いなくこれは、歴史修正主義のことを言っている。それが一体誰に向けられたメッセージなのか――番組はそこまで深く、私たちに問いかけてくる。
 リヴィジョニズム――歴史修正主義の政治的な大波が押し寄せてくる確かな予感が、私にはある。「新・映像の世紀」は、初回から前作「映像の世紀」の記憶を、私たちからいきなり引き剥がす戦略的な意志を明確に打ち出しているように見えた。明らかにそれは、過去映像を形代に、危機の現代的な意味を、観る者へ還流させようとする意図によって貫かれていた。とりわけ、歴史の駆動原理が経済的利権関係にあるという視点が、今回のシリーズではじつに鮮明であり、いささかのブレもない。画像の背後に隠れた見えない主役が誰なのか、かなり的を射た視点が全編を覆っている。
 例えば、1929年の世界恐慌は、前回シリーズではいわば第二次大戦に向かう背景として描かれていた。だが今回シリーズで、それは歴史事象の前景としての意味を負わされ、クローズアップされる。単なる事実関係をではなく、事象をその背後で駆り立てた見えざる何者かの“手”の実在性に触れようとしているかのようだった。
――つづく







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