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評者◆ベイベー関根
水木しげるvs.赤瀬川原平、冥界の大決闘!
わたしの日々
水木しげる
赤瀬川原平漫画大全
赤瀬川原平
No.3237 ・ 2016年01月09日




■いやあ、あんなこと書いてたら、水木しげる、亡くなっちゃったねえ! みんないってるけど、まさか死ぬとは思わなかったよ。
 しかし、オレは悪党だぜ! ワルの中のワル! だから、水木サンの死に乗じて水木サンの本を取りあげちまうんだぜ!
 水木サンといえば、妖怪物や戦記モノなどで数々の名作がありすぎるわけだが、今回取りあげるのは、これが遺作になるんだから、まったく天才としかいいようがない『わたしの日々』。90を超えて『ビッグコミック』に連載した、フルカラー日常マンガ、ときどき昔話入り。
 という紹介ですめばいいんだが、この日常がまたスゴい。兄貴が遊びに来た!誕生日に花が届いた! 野川に散歩に行った! マックのハンバーガーを食べた! 相撲を見に行った! ……って、何のヘンテツもなさすぎやろ! ところがこれが面白いんだなあ。カラーを生かすためだろう、毎回だいたい真ん中にページをまたぐ大ゴマが出てくるんだけど、それだけでなんかワクワクしちゃうんだよねー。ときどき若いころに描いた絵が挿まれたりするのもまたよし!
 これを2015年の5月まで連載していて、7月に単行本化、そして12月には亡くなっちゃうんだから、何というか、見事な去り際としかいいようがないなー。
 (サビに戻って)オレは悪党! ワルの中のワル! だから、追悼っぽいことなんかいわないんだぜ!
 さらに、前の年に亡くなった赤瀬川原平の一周忌本が出たのに乗じて、それも紹介しようって魂胆よ! タイトルは『赤瀬川原平漫画大全』!
 前衛芸術家、マンガ家(?)、小説家、エッセイストと肩書きはいくつか変わったものの、いつも新しいモノの見方を示してくれた赤瀬川原平。昔からマンガ作品だけ集めた本が出ないかなーと待っていたんだけど、1年経ってようやく出ましたなー。これで、あの名作「日本お伽月報」「お座敷」「おざ式」ナドがまとめて読めるのだ! 線がガチガチな初期のころから、後のふにゃふにゃな感じに移行していく感じもよくわかる!
 これが面白いのは、子供のころからマンガが好きで育ったのではない人が描いたマンガってとこだよね。ひとコマ、1ページ、一篇の中に何をどう収めるかの意識が、マンガを描きたくて描いてきた人とはやっぱりちょっと違うんだよね。それが何か、タイプは全然違うけれど、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』の初期のころを思わせるんだよなー。赤瀬川さんは「超科学『紙芝居』」と称して(つまり「マンガ」じゃない)『虚構の神々』って無視されがちな傑作を残してるんだけど、この機会にきちんと読み返したいね!
 しかし、マンガ作品、ホントにこれだけだっけ? 凝りすぎの装丁も微妙だし、それ以上に、目次に収録作品がきちんと載ってないのは、どういうつもりなの? ていうか、もしかしてオレよりワル? てかバカ?







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