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評者◆秋竜山
植物のふしぎとすごさ、の巻
No.3230 ・ 2015年11月14日




■田中修『植物はすごい 七不思議篇――知ってびっくり、緑の秘密』(中公新書、本体八二〇円)を読む。この前に読んだのは、同じ著者の『ふしぎの植物学――身近な緑の知恵と仕事』(中公新書)だった。植物といえば、ふしぎの上になりたっている。しかし、日頃みている植物をふしぎとは思わない。なんとも思わず接している。本書のきっかけにより、植物を見る目が違ってくる。植物のすごさは、人間のように飛んだりはねたりできないということだ。そして、たとえば、あの夏のアサガオなど、今までは、早朝だけのものとして、それも、花だけを見ていたのだ。アサガオは花だけのものではなく、ツルもアサガオであるということである。すると、アサガオが朝の花だけのものではないということだ。本書では、「いったい、どのようにして、ツルは棒やひもを見つけ巻きつくのか」という、やっぱりこれもアサガオである。
 〈ツルの先端は、まっすぐに上を目指して伸びているように見えます。でも、そうではないのです。アサガオのツルは、上から見ると、先端を反時計回り(左回り)に円を描くように、約一時間に一回転しながら、巻きつくものを探しているのです。この円の範囲内に棒やひもがあれば、ツルの先端は回りながらそれらに接触し、そのまま巻きつきます。アサガオのツルが棒やひもに巻きつくには、まず、最初に、ツルが棒やひもに接触したことを感じる性質があります。〉〈アサガオのツルの先端はまっすぐに伸びているように見えます。しかし、実際には、巻きつくものを探すように、円を描いて回っています。〉(本書より)
 この文章を読みながら、これがアサガオのツルでなかったら、なんと恐ろしいことでしょう。もし、これがアサガオのツルのように細いものではなく、たとえば消防のホースのような太さであるとか、電柱の太さのようなものであったら、さあ、どーします。それに、アサガオのツルは、「ヨシ、今朝は、何々に巻きつこう!!」などという計画性のようなものはなく、伸びていく先のことなど、まず考えないだろう。行きあたりばったりで伸びているようである。伸びていく先に何も巻きつくものがなかったら、どーなるのだろうか。接触したものに巻きつこうとしているのだから、接触するままで伸び続けていることだろう。
 〈このツルの先端が描く円の幅には、範囲があります。そのため、ツルが巻きつく棒やひもの太さには限界があります。棒やひもは、細い場合には、ツルの描く円の中に入るので、ツルが巻きつくことは容易です。細い針金や細い糸には、ツルは巻きつくことができます。しかし、棒が太い場合には、ツルが描く円の中に棒は入りきれません。この場合、円を描いているツルは巻き込むことができませんから、ツルは巻きつけません。〉(本書より)
 子供の頃の読み物に、ツルが人の体に巻きつく恐ろしい場面は、忘れられない記憶として残った。山などで杉の木に巻きついているツルの植物を見ると、これがもし、人間であったなら……なんて想像すると、ありえないと思いつつも怖くなってくる。







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