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評者◆竹原あき子
ガリニャーニ書店(GALIGNANI)
No.3229 ・ 2015年11月07日




■英語の書籍に力をいれているパリの書店では、セーヌ川とノートルダム寺院とに面したシェクスピア・カンパニーの人気が高い。ここはフランス語に慣れていないアメリカ人が集まるという。
 もうひとつ、ガリニャーニ(GALIGNANI)というイギリス人の客が多い有名店も見逃せない。その創業は、観光のメッカとなった現在のヴェニスからは想像もつかないが、イタリアという国家が生まれる前のヴェニスが共和国だったころにはじまる。共和国ヴェニスがナポレオンによって消え、経済的に消耗した18世紀後半、国外に出たジョバンニ・アントニオーニ・ガリニャーニは、パリを目指したが、フランス革命に遭遇してロンドンで足止めをくらった。ロンドンで印刷屋の娘と結婚して書店と喫茶店をひらき、やっと再びチャンスをパリでつかんだのは1801年だった。英語書籍の専門店だったが、ロンドンと同じように読書と会話の部屋もつけた。それからほぼ200年、現在の経営者は16世紀にヴェニスで出版工房を経営していた初代から数えて6代目になる。
 現在の店主はナチがパリを占拠していた時、ドイツの将軍たちが頻繁に書籍を買いにきた話を祖父から聞いている。英語の書籍が売り切れてしまい、ドイツ語の出版物はおかないと決心していたので、しかたなくフランス語の文学とアートの書籍をおくようになった、という頑固な書店だ。ヘミングウェイ、コレット、オーソン・ウェルズなどが足しげく通ったルーブル美術館とコンコルド広場の間の、リボリ通りに面したアーケイドの下にある。奥深い書店を進むと、英語コーナーの看板がかかっていて、そこから奥に英語の書籍が並ぶ。その真ん中に、大型の、過ぎた日々を語る皮のソファーが、ゆっくりしてください、と呼びかけている。ガラスの天井から射し込む日差しがまぶしい。
(和光大学名誉教授・工業デザイナー)







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