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評者◆かもめ通信
スラブ語との縁は意外とあるもの
チェコ語の隙間――東欧のいろんなことばの話
黒田龍之助
No.3228 ・ 2015年10月31日




■選評:この本のタイトル、面白いですよね。チェコ語という個別的な、いわば小さな言語の「隙間」に、スラブ語という大きなものがはさまっているような印象です。この書評の端々から、著者・黒田さんの書き方が面白いんだろうなということが伝わってきます。……ちなみに私もドイツのミュンヘンのホーフブロイハウスというビアホールで(以下略)。

■決して自慢できることではないが、私は昔から語学が大の苦手だ。こんなに翻訳小説が好きなのだから、ひとつでもふたつでも他言語を覚えて原書で読めたならもっと楽しめるだろうにと思わなかったわけではないが、中学時代からはじまった根強い英語コンプレックスはその後の語学学習に暗い影を落としたまま。
 あるいはそういうコンプレックスこそが私の“ガイブン”好きに拍車をかけているのかもしれないが。
 それはさておき“チェコ語の隙間”である。著者は元々ロシア語畑の方らしく、これまでも幾つも語学ネタのエッセイを書かれているのだとか。今回の『チェコ語の隙間』は、スラブ系の言語(ポーランド語/チェコ語/スロヴァキア語/セルビア語/クロアチア語/スロヴェニア語/ブルガリア語/マケドニア語)を学習した経験をもとに、現地を旅したときのことや、現地の映画ネタなどが綴られている。
 元々がロシア語学者だから、同じスラブ系の言語なら応用が利くのかと思いきや、さにあらず。似ているからわかることもあれば、似ているからこそ間違うこともあり、似ていそうなのに全く似ていないものもあるようで興味深い。
 チェコに向かう前にパリの空港で長いトランジット時間を過ごさざるを得なくなった時には、頭をチェコ語モードに切り替えるためだけに空港内の書店でわざわざチェコ語で書かれたパリのガイドブックを買う(いくらチェコ語でも、ガイドブックを見たらパリに行きたくならないか?)。
 日本のビアホールでたまたま席が隣り合ったポーランド人たちとポーランド国歌を熱唱する(イタリアでイタリア語もどきのカタカナでカンツォーネもどきを歌って笑われたことなら私もあるが)。
 セルビアでは中世風のフォントで表札を注文してお土産に持ち帰る(これ素敵なアイデア! こういうお土産なら私も欲しい!)。
 マケドニアの食堂でお客に関する従業人同士の軽口を耳にして思わず笑ってしまったら、相手が真っ青!? 店主が「くれぐれもご内密に」とワインを差し出した!?
 そんなエピソードが沢山ちりばめられているのだが、同じスラブ語系ということもあって昔懐かしい千野榮一先生のことを思い出したらそのお名前も飛び出してちょっとウルッときてしまった。
 とここまで読んで、スラブ語なんて縁もゆかりもないからな~と思ったあなた! 縁は意外とあるものですよ。
 というわけで最後に問題。お馴染みのこの曲たち、元はどこの国の歌だかわかるかな?
 1 ゆき~のしらかばな~みき ゆうひがはえる~♪
 2 お~! 牧場はみどり~♪
 3 も~りへ~行きましょう~ むすめ~さん♪

 正解は、1の「トロイカ」がロシア。2の「おお牧場は緑」がチェコかスロヴァキア。3の「森へ行きましょう」はポーランドです。







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