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評者◆ベイベー関根
許されぬ異種族間の恋……これがアメコミ最前線!
サーガ 1・2
ブライアン・K・ヴォーン作、フィオナ・ステイプルズ画、椎名ゆかり訳
No.3224 ・ 2015年09月26日




■いや、なかなかよいではないの、『SAGA』。「『スター・ウォーズ』と『ゲーム・オブ・スローンズ』の出会い」とも評されるこの作品、ブライアン・K・ヴォーン作、フィオナ・ステイプルズ画のコンビによるもので、コミック対象のハーヴェイ賞、アイズナー賞からヒューゴー賞までをかっさらい、現在全米最注目作なんだけど、この邦訳が2巻まで出たんだす!
 銀河最大の惑星ランドフォールとその唯一の衛星リース。このふたつの星で、科学を駆使する「羽人」と魔法を使う「角人」がいつ終わるともしれぬ闘いを繰り広げていた。そんな中、捕虜になった角人マルコと、監視役を務めていた羽人アラーナは恋に落ち、駆け落ちを果たす。アラーナはめっぽう攻撃的で、マルコは殺生を行わないことを誓った身。対照的なふたりの間には、羽と角のある子供、ヘイゼルが生まれる。どちらの側からも追われる立場の彼女たちの逃避行が始まった……。
 こうした物語に、顔がモニターになってる王族やら、フリーランサーと呼ばれる殺し屋たちやら、相手が嘘をついているとすかさず「嘘つき」と喝破する“嘘つき猫”やら、ホラーズと呼ばれる亡霊(!)やら、巨大な顔からいきなり脚が生えてる置屋のババア(?)やら、楽しいキャラクターやクリーチャーが続々登場。第1巻の終わりで現れるマルコの両親が、ふたりの仲を許すかどうかなんて下世話な話をするのも、なんか微笑ましいな!
 ヘンテコな要素を盛り込みつつ、新時代の王道ストーリーを目指そうってヴォーンの野心がうかがえる一方、作画担当のフィオナ・ステイプルズの、キビキビしつつ色気のある線も、これまたいい感じ。
 個人的にツボったのは、ふたりのなれそめが、ひとつ目の流行作家が書いた三文ロマンスをふたりが深読みして意気投合するっていう設定。そんな時代に本あんのか! てか、今のペーパーバックと全然形態変わってないじゃん! っちゅう話でもあんだけど、いやあ、本を読むって楽しいよねー(笑)。
 ちょっとだけケチをつけると、主人公のキャラの造形にしろ、さっきのペーパーバックの話にしろ、なにかジャスト現在の常識に縛られすぎてんじゃねーかと思うんだよな(特にPC感覚)。その程度の想像力の射程しかもってないんだったら、逆に古びちゃうのも
早いんじゃないの? っていうさ……。
 それはともかく、冒頭で「2巻まで出たんだす」って書いたけど、早くも9月には3巻が出るそうな。この原稿、それまでに印刷されるかどうかちと怪しいので、内容をひと足先に予告しておくと、アラーナとマルコの逃避行に特ダネの匂いを嗅ぎつけた記者コンビが取材を始め、賞金稼ぎのフリーランサー、ザ・ウィルとマルコの元婚約者でもあるグェンドリンらも着々とふたりに迫る。そしてついに……おおっと、あとはいえねえ、続きは現物で!







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