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評者◆小嵐九八郎
「党」と「パルチザン実行者」の違い
パルチザン伝説
桐山襲
No.3221 ・ 2015年09月05日




■秋田の外れの農民の出自の父と母が、雨の少ない夏も、多雨の夏も「米、大丈夫だびし?」、「野菜が駄目になるど」と故郷を思って涙ぐんでいたが、この夏の関東は雨と曇り空の印象だった。大老人になったせいか、蒸し暑さばかりはしんどく……。
 やっと涼しくなるかと思う八月の終わり、河出書房新社から『パルチザン伝説』(桐山襲、本体1800円)、『狼煙を見よ』(松下竜一、本体2200円)、『日本のテロ――爆弾の時代60s‐70s』(栗原康監修、本体1000円)の三冊が出たのを知り、再び暑さを感じ、しかし、そのう、嬉しい冷えみたいなものも感じた。いずれにしても、熱い編集者のパワーに頭を垂れる。
 桐山襲の『パルチザン伝説』は当方が物書きになる前の一九八三年の小説だが、『文藝』に載った文藝賞の最終選考に残った作で、河出は右翼の妨害もあり出さず、作品社から出版している。もう闘いの炎は下火になる一方でありながら、たぶん、活動家の三割ほどは読んだはずである。ここいらの歴史はこの本の解説で友常勉氏が記しているけれど、今年五月、死刑判決を受けたまま獄中で亡くなった“行為”の人の大道寺将司さんは「全共闘運動を敗北と総括し、反日革命の展望を見出せない」と書いたそうだ。俺もその頃読み、革命のロマンと物語の豊かさと神話的世界への融解に、かなりの驚きを思ったことを記憶している。今度読み直したら、兄への語りで弟の主人公が「党」と「パルチザン実行者」の違いの意識化において、深い、と思ってしまった。いつの時代にも角逐はある……が。
 松下竜一の『狼煙を見よ』はノンフィクションで、この人独特の優しさが一九七四年の連続企業爆破の件に決して無条件での賛意ではなく、その底の人の熱さに触れていて、再読しながら感じ入った。
 栗原康氏監修の『日本のテロ――』には、若者に「この時代を知るためのブックガイド」の項があり、むしろ老人が読み、何を青少年に残すべきかを問うていて、俺も残りの人生を少しはきちんとしなけりゃ……と。泣きですな。







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