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評者◆ベイベー関根
コドモたちは大変だ……。
岡崎に捧ぐ 1
山本さほ
ビーンク&ロサ
模造クリスタル
No.3219 ・ 2015年08月15日




■いやあ、これからのコドモさんたちは大変だよね、世の中もどんどん変な方向に行っちゃうしさ。というわけで、今回は「恐るべき子供たち」ならぬ「ヒドい目に遭うコドモたち」二題。
 まず、山本さほ『岡崎に捧ぐ』。小学4年生のときに横浜に越してきた作者のクラスにいた、仲良くなりたい人ランキング堂々最下位の岡崎さん。ひょんなことから彼女の家を訪れることになった作者は、まずおばけ屋敷さながらの家の様子に度肝を抜かれる。それに見合うように、家の中はぐちゃぐちゃ。休職中のおとうさんはパンツ一丁で在宅中、おかあさんはいつもヒラヒラした格好でほろ酔い加減、そして妹は突然怒鳴りだしては壁やドアを殴る蹴るの狼藉ぶり。あからさまにヤバげな環境ながら、小学生だけにスーファミやり放題という魅力には勝てず、ついついふたりは仲良しに……。
 という具合に始まって、おお、このまま岡崎家の闇の部分にどんどん突っ込んでいくのか、そいつぁおもしれー! と思っていたら、わりと90年代の子供文化あるある話になっていって、ちょっと当てハズレ。それはそれでディテールは違ってもちゃんと別の世代にも通じるように描いてあって、よかったけどね。
 さて次の作品は、模造クリスタル(これが作者名)『ビーンク&ロサ』。
 帯には「放棄されたキャンピングカーに住む、少年・ビーンクと少女・ロサの日常。」と書いてあるが、これじゃあまったく中身がわからんじゃないの!
 だが、実をいうとそれだけじゃなく、話が始まっても、しばらくは何の話だかさっぱりわからないのだ。
 第1話は、花に水をやりすぎるとどうなるかという謎の問答から始まり、ページをめくると、その問答していたキャラクターはすぐに消え去り、兄と妹らしきキャラが電車に乗っては目的地にたどりつけずに右往左往するという話に。
 次の話では、さらに別のキャラクターが、肉が大好きゆえに肉の描き方を学ぼうとする。「肉の描き方Chapter 3」では、第1話の兄と妹らしきキャラが再登場、仮面の男とお姉さんぽい女性に肉をふるまってもらっているという展開に。
 何ソレ? と思われるだろうが、いや、ホントにこの2話先くらいまではこんなノリで、まったくワケがわかんないんだよ。だけど、そのうち、どうもこの兄と妹らしきコドモたちは、怪人に育てられているらしきことがわかってくる。何のために? それも後である程度はわかってくるんだけど、もしかすると、その謎は大して重要じゃないのかもしれない。それをめぐって話が展開しているわけでもなさそうで、むしろ話の途中で連想ゲーム的に別の人の想念や何やらにつながりつつ、ある情感をかきたてることの方が重要そうだからだ。だけど、それはもっと広い世界としっかりつながってもいるようでもあって、この語り口は新しいなあと感心した次第。べっ、別に賛成してくれなくてもいいんだからねっ!







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