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評者◆小嵐九八郎
紙の新聞よ、どこへゆく――「朝日新聞」の連載「義理と人情をたどって」を読む
No.3219 ・ 2015年08月15日




■紙が、好きである。かつての藁半紙、和紙、原稿用紙、本や雑誌の紙、紙幣の特に一万円札、トイレット・ペイパー、みんな。手触りが良い。汚れを丸めて包み、消してくれる。敗戦前までは高価で、簡単にはいかなかったろうが誤字脱字や失敗の文を御破算にしてくれる。うんと昔、六十五年ほど前、当方の東北の田舎の更にまた深いところの便所に、六歳だったか、父の実家のそれに入ったら、当時は落とし紙と呼んでいたが、その草葉色のざらざら紙がなく、草、それも蓬とかどくだみとか細長い雑草が置いてあり、指の間から糞が逃げ、痛く困り果てた。
 ゆえに、紙媒体の雑誌、文庫、単行本、新聞が、指だけでなく躯に馴染み、好きだ。むろん、そこでの活字そのものは、グーテンベルグの活版印刷術の発明の上に立っているとしても。朝飯や便所の場で、ツルツル画面のスマホを見て文字を読む気分にはなれない。
 その新聞のことだ。「時代に追いつけない」の緊迫性と焦がれの中で五紙を日日に読んでしまう。「毎日」と「朝日」は、先の大戦の口火あたりで「膺懲せよ!」と政党や軍部より先に叫んで懲りただろうし、今の今の“安保法案”の確実に違憲、戦争への介入に、ちゃんと冷静に書いているし、戦前戦中はちっこかった「読売」は大して責任はない上に、十年ほど前か「検証 戦争責任」を連載してかなり誠実だったが、逆に無自覚か、客観的報道をこの一年半していないような。
 当方は、でも、どうしても「毎日」なら夕刊の「特集ワイド」、「読売」なら「人生案内」と月一の「時の余白に」、「東京」なら「こちら特報部」と「大波小波」に目がいき、しがみつく。「朝日」は「素粒子」以外、「be」に力が入るのか、ない。ところが、六月一八日夕刊で、おいっ、「義理と人情をたどって」の連載が始まった。一回目は国定忠治だ。秩父困民党の主軸は博徒、的屋は行商人先駆者同盟を打ち出し、我らは健さんの仁侠映画に惚れ、『男はつらいよ』の渥美清を愛した。こういうのを「朝日」はコンパクトにもっと、もっと。








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