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評者◆秋竜山
まんじゅう怖い、エリート怖い、の巻
No.3218 ・ 2015年08月08日




■芥川賞で大さわぎとなった「火花」。話題好きのおばさんたちと話す。芥川賞が話題になるのは、こういう時であればこそだ。とっさ的には本のタイトルは「花火」であった。読んでない人は「花火」であって、読んだ人は「火花」で、あるというのであるといいあう。そして、それでいいのだと、「アハハ」と、笑いあうのである。「すごい!!」と、いう。売れ行きがすごいのである。文句なしだ。そして、お金の計算までしだすのである。
 橘木俊詔『日本のエリート――リーダー不在の淵源を探る』(朝日新書、本体七六〇円)を読む。
 〈エリートがどういう職業の人かに注目すると、これまでは政治家、軍人、僧職、経営者、官僚などが代表であった。時代によってどの職業が時に重要であるかは異なる。本書はまず、どの時代において、そしてどの国において、どのエリートが大切であったかを明らかにする。〉(本書より)
 その時代を、よくも悪くも、エリートのせいでどうにでもなるような、ならないような。まんじゅう怖い、エリート怖い。
 〈もしコペルニクスやマルクスという天才がこの世に生まれることがなかったら、地動説やマルクス主義は半永久的に生まれなかったのであろうか。ということを考えてみたい。私の判断は、たとえこれらの天才の誕生はなくとも、誰かそれに代わる人が誕生していて、似たような学説や思想を提案した可能性が高い、というものである。〉(本書より)
 コペルニクスやマルクスではなくて、別の人であったら、どんな風になるのだろうか。考えただけでたのしいものである。宇宙のどこかに地球と同じような星があって、そこでは、太陽が地球を回っているなんて、そんな空想をしただけでも面白い。
 〈これまでの常識を打ち破り、人々の地球、天体に対する考え方を180度転回した科学者である。コペルニクスやガリレイの考え方を、さらに180度転回する科学者があらわれたとしたら、また元にもどるということになる。常識は打ち破られるためにあるのである、としたら、そんなことも不可能ではないだろう。常識を打ち破るということは、180度転回させることであるだろう。ソーテイ外という言葉が流行したことがあったが、ソーテイ外とは180度転回ということか。コペルニクスもガリレイも、毎日自分でつくった天体望遠鏡で宇宙を見ていたのであろう。雨のふる日は休日であったりして。毎日、天体望遠鏡をのぞくのが仕事という物理学者も、それが遊びではなく仕事であるというのが、自分をそういう人であると納得しているのが面白い。只の人からみればそれが当たり前だろう。そういえば、外国マンガに有名な作品があった。天体物理学者とおぼしき人物が、ガタピシの椅子の上にのっかり立って、望遠鏡で空の星をながめているというマンガである。すこしでも宇宙に近づき望遠鏡で星をながめるという天体物理学者の心理であろう。只の人からみれば、まさにバカバカしいマンガとしかとらえられないのである。それが、もしかすると、180度転回のエリートの姿かもしれない。







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