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評者◆秋竜山
わからないように怠ける、の巻
No.3216 ・ 2015年07月25日




■釘原直樹『人はなぜ集団になると怠けるのか――「社会的手抜き」の心理学』(中公新書、本体八八〇円)を、読みながら働きアリの働いているのは30%ぐらいで、あとのアリたちは怠けているらしいとのこと。なにかの本で知った時、アリの動きまわっているのが気になって様子を見るようになったが、働いているのか怠けているのかよくわからない。わからないように怠けているのか。だとしたらたいしたものだと感心もする。
 〈社会的手抜きとは、集団で仕事をするときのほうが1人でするときよりも1人当たりのパフォーマンス(業績)が低下する現象である。(略)集団の中に埋没して他者の目を気にしないで済む状況では、人は邪なことを考えたり、反社会的行動を行ったり、仕事をサボったり、手抜きをするような存在であるという考え方がある。(略)ただし、意図的に「不善」をしているつもりはなくても、他の人と一緒に作業をしていると思っただけで、人は無意識に手抜きをしてしまう。その原因として「自分が頑張っても、それが集団全体の業績にはあまり影響しない」という「道具性」欠如の認識、他の人がしっかり仕事をしているので自分が頑張る必要はないと感じる「努力の不要性」の認識、たとえ頑張ってもそれが他の人にはわからないので評価されないという「評価可能性」欠如の認識などが挙げられる。〉(本書より)
 子供の頃、土方作業をしている大人たちを見て、一日中力仕事をしていて、よくつかれたりへたばったりしないものだと、いくら体力があるからだとはいうものの不思議であった。後でわかったことは、大勢で力をいれたり抜いたりして作業をしているということであった。それなら何時間も続けて作業しても平気である。アリも、その手抜き法というものを知っているのだろうか。作業しているように見せかけて実は怠けているという大人のチエというものか。若い時、村の道づくりなどの共同作業などをしている時、「オイ、そんなに夢中になってやると、すぐへたばってしまうぞ!!」と大人たちにいわれた。大勢で力仕事をするにはどうしたらよいのかわからなかったから、夢中になってやるしかなかった。力を抜くということは怠けているということとしか思えなかったし、そんなことをしては大人たちに叱られる。つまり、作業のコツというものがあるということだ。本書でも取り上げられているが勤勉、努力一筋という賞賛されている人に、エジソンや二宮金次郎(尊徳)、松下幸之助がいる。
 〈怠け者が愛される物語は多数あり、映画「男はつらいよ」のフーテンの寅さんも、「釣りバカ日誌」のハマちゃんも基本的には怠け者である。〉(本書より)
 そこで、フッと思ったのは、この二組をそれぞれの無人島に上陸させてみたらどーなるかということである。二宮金次郎と松下幸之助が毎日一緒に生活したらどうなってしまうか。そして、フーテンの寅さんと釣りバカ日誌のハマちゃんが二人きりの生活となったら、どうなってしまうか、だ。ハッキリしているのはハマちゃんである。毎日、釣りばかりしているだろう。魚ばかり食べることになるかもしれないが、食料には困らない。自分の怠けるのはわからなくても、他人の怠けるのは気になるものである。








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