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評者◆竹原あき子
子どもたちを読書に誘う豊かな企画
No.3212 ・ 2015年06月27日




■子どもに配慮した「若者コーナー」で連日数多くの企画がくり広げられた。日本でも人気がある「レオ・レオニ」や「ロバのトロトロ」の映画を上映し、壇上に子どもを招いて絵を描き、一緒に撮影というワークショップ、ファンタジー人気作家とのワークショップなどなど。
 国営のラジオ局のストライキがあり、生放送はできなかったが、サロン・ド・リーブル(本の祭典)のニュース番組の原稿を書き、朗読,録音までを、放送局と同じ設備で高校生を中心に演習する姿もあった。原稿を書くのに時間がかかりすぎる場合には、放送作家が指導し、録音には話し方を指導するアナウンサーも控えているほどだった。
 「私の王国(Mon royaume)コーナー」も異色だ。出版を広報するかわりに、5歳から12歳の子どもを〈読み書き〉に導こうとする組織だ。「私の王国」と親が契約をすると、子ども宛に封書が届き、王国の名前と王あるいは女王に任命する書面がはいっている。どんな従者と一緒に暮らしたいかなどの質問があり、それに答えると、やりたいことは何? と問い合わせの手紙がくるという手順で手紙のやり取りが始まる。もちろん「私の王国」と契約している作家あるいは教員が物語を進行する。
 1年間の手紙のやり取りは数冊の本と同等の読み書きに相当し、子どもが夢見る世界をインタラクティブにつくり出す初めての試みだ。この「王国」には1年、2年と契約してから入城するが、契約料金は5000円から2万円ほどと期間によって異なる。子どもの夢を、紙というアナログな手段で物語にして、読み書きを学ぶのは時代錯誤ではないかという質問に、だからこそ手紙だという返答があったが、メールでの交換も否定しているわけではない。
 最も興味深いのは15歳以下の子ども8000人に8ユーロ(約1000円)の図書券を配布することだ。もちろん先生に引率されていることという条件はあったが、文部省の読書プロモーションの一環だった。
 専門家の商談の場だったサロン・ド・リーブルは紙媒体を使う書籍の販売減に悩みながら、e‐bookの行方も見据えている。今年はAmazon Kindle Direct Publishingの出店で「e‐book自動出版」コーナーが設けられ、個人がデータを入力すれば10分で紙に印刷され、書籍となって出力できる装置を実演公開した。
 とはいえ、パリ、サロン・ド・リーブルは読書に関する子どもの王国だったかもしれない。
(和光大学名誉教授・工業デザイナー)









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