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評者◆ベイベー関根
いま、時代劇マンガはこうなっている!のか!?(前編)
剣術抄 第二巻
とみ新蔵
No.3207 ・ 2015年05月23日




■それにしても『コミック乱』はエラい! 時代劇という枠さえ押さえておけば、アクション、ロマンス、ミステリー、人情もの、SF、ギャグ、何でも描けるんだから、作家にとっては腕のふるいがいがあるってもんだよなー。思えば、にっかつロマンポルノとかもそういう環境からいろんな傑作が生まれたんだった。
 しかし、それもこれも、さいとう・たかを『鬼平犯科帳』と、大島やすいち『剣客商売』という二大「定食」がしっかり支えてくれてるおかげで、このクォリティが落ちないのも、マジ感心。ロマンポルノだって西村昭五郎や林功、加藤彰といった職人監督がきちっとお客さんを集めてくれてればこその冒険だった……。『蝶のみちゆき』が大評判の高浜寛の新連載『ニュクスの角灯』もメジャー感を増してて面白いが、今回取り上げたいのは、なんつってもとみ新蔵の『剣術抄』だ!
 とみ新蔵先生といえば、『柳生連也武芸帖』とかで有名な、今年で70歳を迎えられる時代劇マンガの大巨匠。しかも、あの平田弘史先生の実弟でもあらせられるのだあああ!
 が、この『剣術抄』、いつものとみ作品とはやや雰囲気が違う……。昼寝する爺さんへの不意打ちを失敗し、鼻水を垂らしてワナワナ震える落ち着きのない若造が出てきたかと思ったら、太もも眩しい天女が舞い降りて、いきなりその爺さんと一儀に及ぶではないか!
 と思ったら、その数ページ後の剣術シーンでは、勘所の事細かな実戦的解説が! かと思えば、その爺さんこと辻月探と、弟子入りした若造・吾作が赴く洞窟の中にはなぜかタイムマシンがあって、ふたりは古代ローマへタイムスリップし、前代未聞の“異種武術戦”に突入!?
 驚きつつも、「ははあ、このまま時空を超えた“異種武術戦”で、日本剣術が一番強いという話になるのかな」と思いきや、2巻に入るとまた様子が変わってきて、本格仇討ちものに! そして最終回では、唐手の達人を軽~くあしらって、いきなり終了! 何じゃ、このフリーダムすぎる謎展開は!?
 いや、これはすべてとみ先生の剣術愛のなせる業。「あとがき」には、とみ先生が、山本一夫師について剣術を学んだ後、ひとりで研鑽の道を歩んだことが書かれていて、居住まいを正すほかなし。「『剣術抄』は古今東西になかった剣術の極意書だと自負しております」とのおことばも! そういや、この主人公の辻月探、心なしかとみ先生ご本人に似ている……!
 いやー、まいった。この発想、2巻で完結とはもったいないな~と思っていたら、やったぜ、『剣術抄 新宿もみじ池』がまた『コミック乱』でスタート! こっちはフリーダムさを抑えて、ふつうの時代劇ものっぽい感じなので、素っ頓狂なものが苦手な方にも入りやすいかも。そういや、『乱』のどこがエラいって、まず表紙がエラいんだよね。めくってみればわかるぜ!







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