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評者◆秋竜山
アリはすごい、の巻
No.3207 ・ 2015年05月23日




■丸山宗利『昆虫はすごい』(光文社新書、本体七八〇円)。昆虫といえばアリとなる。冬には姿がないのに、この時季になると、姿をみせる。アリだけに限らず昆虫たちは生きているところをみせてくれる。寒さぐらいではへこたれない。そして、アリの姿に、変に感動したりするのは、若い時はそーでもなかったのに、と思えるのはそれだけ自分が年とった証拠かもしれない。本書を読みながら、ハッ!! と気づかされるように感じたのは、
 〈アリの巣は暗闇で、アリは化学物質に頼ってなかま同士の交信を行っている。〉(本書より)
 と、いう個所である。アリの生きる模様は図鑑などで知ることができる。地面の下に穴を掘ってアミの目のように通路などをつくり、そこでアリ一族は冬の寒さにたえるようにして、外へも出ないで地面の下で生活している。図鑑にはパノラマ式に絵がのっている。子供の時、やはり図鑑でデパートの内部をタテ割りにして全館が描かれているのを見て、パッとみて、パッとわかる、その面白さに感動したものであったが、まったく同じ感動は、アリの地面の中での生活でもそーだった。デパートの内部とアリの内部を一緒の感覚でながめていた。ところが、同じようでいてまったく異なっているのは、デパート内は明るさの中で営業しているのである。アリの巣の中は、真っ暗闇の中であるということだ。図鑑ではそのことに気がつかなかった。アリの巣の中もデパート内のように明かりがともっている。そんなことよりも明かりについて気づかないことだった。人間は明かりを持っているが、アリは明かりなどというものを持っていない。昼に巣から外へ出れば、陽の光をあびることもできようが、夜とはいわず、たとえ昼の間でも一旦巣の中へもぐると、明かりの一斉のない闇の世界である。たとえ、マンガであったとしても、アリのドークツの中に電燈がぶらさがっているなど、ありえないだろう。アリの巣の中は暗くても明るいものとして、とらえているのが普通であるだろう。もし、子供が「アリのお家の中はいつもまっくらなの?」と、質問したとしたら、質問された男はギョッ!! と、しなくてはならないだろう。当たり前だとわかっていたとしても、この感性に喜ぶべきではなかろうか。そういえば子供の頃、一升ビンに土をつめ込んで、その中へアリをつかまえて放り込んだ。ビンの外からアリが巣をつくるのを眺めたいためである。そういうことを経験した子供たちは大勢いたと思う。そして、すべて失敗に終わっていると思う。アリが暗闇の中でぶつかりもしないで生活できるのも化学物質に頼って仲間同士と交信しあっているからである。人間にはできないことだ。暗い夜道であったとしても一寸先がわからない。もし人間も、明かりというものを開発できなかったら、化学物質に頼って仲間と交信しあうことになったのだろうか。そんなことを考えながら、アリの進化について、人間よりもすぐれているのではなかろうかとさえ思えてくる。明かりのない生活。夜になると本も読めない。それとも化学物質で読めるようになるのかしら。







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