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評者◆秋竜山
心とはあの世のものか、の巻
No.3206 ・ 2015年05月09日




■岡潔『情報と日本人』(PHP文庫、本体五二〇円)で、岡潔の「情緒」と「大脳前頭葉」。天才数学者の岡潔をどーとらえればいいのか。凡人には、とらえよーがないだろう。数学というものが、まずわからない。わかろうとするほうが無理というものだ。とにかく、すごい学者であるとしか、とらえようがないだろう。
 〈少なくとも団塊の世代くらいから上の人たちの多くは、その名を一度は耳にし、知っているはずだ。それは、二十八冊近くに及ぶ著書による憂国のエッセイストとしての側面であろう。〉(本書より)
 数学者として超有名であり、エッセイストとしても超有名である。昔の人のようでいて、今の人よりか今の人であるという時代を超える人というのはこういう人のことをいうのか。
 〈岡先生が活躍された時代から時は流れ、それらの本は軒並み絶版となってしまった。しかしながら数年前に、随想集という形で数冊が刊行され、さらに「春宵十話」(光文社文庫、二〇〇六年)が復刊された。また、小林との対談は「小林秀雄全作品第25集 人間の建設」(新潮社、二〇〇四年)に再録され、重版もされたという。〉(はじめに―帯金充利)
 念のために申し上げると、この書の言葉だけで、岡先生の思想の全貌がわかるとは考えないでほしい、岡潔という先賢の「入り口」的な存在として考えてほしいのである。と、帯金さんは本書で述べている。情緒というと、私などはすぐ、夜の暗い路地裏などの飲み屋の店の入口にぶらさがっている「赤ちょうちん」などを想い出してしまう。今は昔ほど赤ちょうちんを見ることはできなくなってしまったが、あの風景こそ日本の情緒だといえるような気がする。なつかしの日本情緒というべきか。なぜ、赤ちょうちんを見ると、情緒的であると思えるのだろうか。店員が店を始める前に赤ちょうちんをぶらさげる時、店がしまった時、赤ちょうちんをはずす時、その光景を眺めるだけで日本の情緒にどっぷりつかったような気がしてくるのである。そう思えるのは飲み助だけだろうか。
 〈こころというと、私は何だか墨絵のような感じをうける。彩りや輝きや動きは感じられない。こころの彩りや輝きという観念は、私たちは西洋から学んだのかもしれない。そういったものが感じられる言葉を使った方が、心を詳しく見るに都合がよいから、私は「こころの一片」という代りに「一つの情緒」ということにしたのである。「春風夏雨」〉(本書より)
 たしかに黒の墨一色のほうが心の中にはいり込めるような気がする。床間にかけてある掛け軸の墨絵なども眺めていると心にかようものがある。色とりどりのゴテゴテした絵にはそのような雰囲気はつかめない。色のない墨絵は、あの世を思わせるものがある。心とはあの世のものか。
 〈すみれの花を見るとき、あれはすみれの花だと見るのは理性的・知的な見方です。むらさき色だと見るのは、理性の世界での感覚的な見方です。(略)すみれの花はいいなあと見るのが情緒的と見る見方です。(略)「風蘭」〉(本書より)
 やっぱり、そーか!! 夜の花を赤ちょうちんと見るのが情緒的な見方であるのだろうか。ちがったかな!!







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