■参院選で予想外の惨敗

　尾辻かな子が日本初のＬＧＢＴ候補として民主党から挑んだ第２１回参議院議員選挙は、１７日間の運動期間を終えて、７月２９日（日）に投開票日を迎えた。折しも第一次安倍政権下で、閣僚が不祥事で相次いで辞任するなどの失政が続くなか、民主党へ期待が寄せられ、マスコミも本格的な政権交代の前触れ・前哨戦と書き立てた。
　尾辻本人は多くの候補者がそうであるように無我夢中で蓋をあけるまで分からないという必死の感覚だったが、選対メンバーは、この追い風をうけて、上位当選も夢ではないと期待に胸をふくらませた。ところが、民主党は下馬評どおり、いや下馬評をはるかに超えて大躍進したにもかかわらず、尾辻は惨敗を喫した。
　まずは尾辻をふくめた選挙結果を確認しておこう。
　野党第１党の民主党は、改選議席の３２を６０へと倍増させ、非改選をあわせると１０９議席と参議院で第１党となった。一方、選挙前は１１０議席であった自民党は、６４の改選議席を３７と激減させ非改選とあわせて現有議席８３となり、１９５５年結党以来初めて他党に参議院トップの座を譲るという歴史的大敗を喫した。
　では、尾辻が挑戦した全国比例区はどうだったか。ここでも民主党は、得票数２３２５万６２４２（得票率３９・４８％）を得て改選定数４８のうち２０議席を獲得するが、尾辻は別表のように、３万８２２９票で３５人の候補者中２９位と惨敗する。なお他党の獲得議席は自民党が１４（得票率２８・０８％）、公明党が７（同１３・１８％）、共産党が３（同７・４８％）、社民党が２（同４・４８％）、国民新党が１（同３・０１％）、新党日本が１（同２・１５％）であった。
　選対の中でも厳しい読みをしていた元ゲイ雑誌編集者の後藤純一ですら、これは予想外の結果だった。ましてや多くは上位当選を信じていただけにその失望感は大きかった。
　いったい敗因はなんだったのか。
　尾辻選対では、投開票直後はもちろん、それからしばらくは総括などできなかった。というより総括をする気になれないというのが正直なところだった。
　あれからＬＧＢＴをめぐる環境は大きく変わった。往時は見えなかったものも客体化できるようになった。そこで、かつて事務所を構えた新宿２丁目で、当時の主要選対メンバーに７年目の「総括」をしてもらった。詳細は次回以降で――。
（本文敬称略）
（つづく）

　２００７年参院選比例
　民主党確定得票
　得票数　　　２３，２５６，２４２
　得票率　　　　３９．４８％
　当　相原久美子　新　　　　　　５０７，７８７
　当　吉川沙織　　新　　　　　　３０６，５７５
　当　青木　愛　　　新　　　　　　２９７，０３４
　当　石井　一　　　新　　　　　　２９２，２７１
　当　池口修次　　前　　　　　　２５５，４５３
　当　ツルネン・マルティ前　　２４２，７４２
　当　神本美恵子　前　　　　　　２２４，９９９
　当　横峯良郎　　新　　　　　　２１１，８２８
　当　藤原正司　　前　　　　　　１９４，０７４
　当　川合孝典　　新　　　　　　１７１，０８４
　当　風間直樹　　新　　　　　　１６９，７２３
　当　轟木利治　　新　　　　　　１６６，９６９
　当　大島九州男　新　　　　　　１５３，７７９
　当　西岡武夫　　前　　　　　　１５１，３７６
　当　今野　東　　新　　　　　　１１１，４５３
　当　藤原良信　　新　　　　　　１１０，１２５
　当　藤谷光信　　新　　　　　　　７９，６５６
　当　室井邦彦　　新　　　　　　　７２，５４４
　当　大江康弘　　前　　　　　　　６８，９７３
　当　山本孝史　　前　　　　　　　６７，６１２
　　　大石尚子　　新　　　　　　　５９，７１８
　　　広野允士　　前　　　　　　　５３，０５１
　　　秦　知子　　新　　　　　　　４７，９３７
　　　斉藤　勁　　元　　　　　　　４４，５２９
　　　玉置一弥　　新　　　　　　　４３，２９１
　　　樽井良和　　新　　　　　　　３９，９２７
　　　木下　厚　　新　　　　　　　３９，０４６
　　　三輪信昭　　新　　　　　　　３８，５２４
　　　尾辻かな子　新　　　　　　　３８，２２９
　　　山村明嗣　　新　　　　　　　３４，３９５
　　　叶　芳和　　新　　　　　　　３３，６５７
　　　山崎摩耶　　新　　　　　　　２７，５００
　　　長崎慶一　　新　　　　　　　２６，４０３
　　　高竹和明　　新　　　　　　　２５，１６７
　　　金　政玉　　新　　　　　　　１９，４６８
　　　　
　　　　政党名での得票１８，８２９，３３５