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評者◆北村知之(スタンダードブックストアあべの)
スポーツへの愛憎半ばする気持ちを持て余しているときに読みたい
どちらとも言えません
奥田英朗
No.3203 ・ 2015年04月18日
■“とうとう春になっちゃったねえ!”と『ローマ字日記』の石川啄木のような不安を抱えてこの四月を迎えた。といっても、転職して人間関係が変化したとか、花粉症で体調がすぐれないというわけではなく、野球のはなしである。プロ野球。神戸で生まれ育ちながら、もう二十年以上広島カープを応援しているが、これほどの期待感でパンパンにふくれあがったシーズンはいまだかつてなかった。昨年まで二年連続Aクラス、野村謙二郎から緒方考市への監督交代、メジャー移籍が濃厚だと思われた前田健太の残留、菊丸コンビなど若手が台頭し世代交代がすすむチーム、裏切り者のユダこと新井貴浩の出戻り、そしてなんといっても帰ってきた黒田博樹。試合結果も個人成績も掲載されないスポーツ紙をつい買ってしまうほどの火傷しそうなストーブリーグをのりこえて、ようやく迎えた開幕。いざフタをあけてみると、打てないわ、守れないわで、二勝七敗の最下位(四月七日現在)。なんじゃそりゃ。仕事から帰宅してスポーツニュースを見ては、口から夕飯をまき散らしながら悪態をつく。これじゃあ、むかしとおなじじゃないか。しかし、まあ、そんな野球の季節にまつわるあれやこれやが楽しい。
こんな野球やそのほかのスポーツへの愛憎半ばする気持ちを持て余しているときに読みたいのが、奥田英朗のエッセイ。小説のほうはいまいちピンとこないが、雑文家としての奥田英朗は愛読している。野球のキャンプ地や地方球場を巡る『野球の国』(光文社文庫)、アテネオリンピックを観戦する『泳いで帰れ』(同)、小説『家日和』(集英社文庫)で「いい人は家にいる」という真理を言い放った作家の紀行エッセイ『用もないのに』(文春文庫)。とくに『どちらとも言えません』(文春文庫)は、雑誌『Number』に連載されたスポーツエッセイ。アスリートを常人のおよばない絶対的な存在としてきちんと崇めつつ、返す刀でバッサバッサとたたき斬っていくのがおもしろい。野球場の内野スタンドでビール片手にヤジっているおっさんのまんまなのだ。そしてなにより共感できるのは、「スポーツにおけるファースト・プライオリティは美しさ」だと書いているところ。スポーツ観戦の魅力は勝ち負けではなく、祝祭的な興奮と美しさなのだ。 ところで最近の『Number』はつまらない。まいどまいどおなじ選手におなじライターが取材する特集記事には飽き飽きする。それはしかたがないにしても、大昔に村上春樹がアメリカの雑誌や新聞から話題を拾って紹介していた「THE SCRAP」や、日韓ワールドカップの特集号で連載されたギンティ小林の小ネタ集「10点差し上げる」みたいな、きちんと読んでおもしろい記事をもっと増やしてほしい。日本の現代アートをフォローしている唯一の雑誌『美術手帖』とともに、唯一の総合スポーツ誌として応援している。 |
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