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評者◆北村知之スタンダードブックストアあべの()
できたてほやほやの本
辻征夫詩集
谷川俊太郎編
No.3199 ・ 2015年03月21日




■『谷川俊太郎詩集』、『茨木のり子詩集』につづいて、おなじく谷川俊太郎の選で、岩波文庫に『辻征夫詩集』がはいった。べつに岩波文庫がえらいともなんともおもわないし、現代詩文庫の『辻征夫詩集』も『続・辻征夫詩集』も『続続・辻征夫詩集』ももっているけれど、それができたてほやほやの本であることが、とても気分がいい。さらに詩文庫のように、二段組になっていないので、読みやすくてたすかる。これでいつか、岩波から『黒田三郎詩集』や、『菅原克己詩集』がでてもちっともおかしくないだろう。古本で見つけだして読むというのもいいけれど、新刊の辻征夫を買うというおこないはとくべつにたのしい。いろんな本屋で、あと三回くらいはやりたい。そして、その買って帰ってきた文庫本を、自分の部屋の本棚のしかるべきところに並べる。たとえば二〇一二年に名古屋のシマウマ書房がつくった、八木幹夫『余白の時間――辻征夫さんの思い出』のとなりに。そうして仕事で暮らしていた名古屋を思い出したり、古本屋で『俳諧辻詩集』を買った旅先の金沢を思い出したりする。そんなことのすべてが読書だとおもう。
 現代詩文庫の『辻征夫詩集』の裏表紙にある短い推薦の言葉のような文章を書いているのは、谷川俊太郎で(ちなみに、続は多田道太郎で、続続は小沢信男)、詩の森文庫のエッセイ集『私の現代詩入門――むずかしくない詩の話』によると、辻征夫がはじめて詩人について書いたのは谷川俊太郎論らしい。
 そんなことから、岩波文庫版の『辻征夫詩集』にもなんとなく期待していたとおりに、個人的に好きな『ヴェルレーヌの余白に』の「レイモンド・カーヴァーを読みながら」と、『萌えいづる若葉に対峙して』の「チェーホフ詩篇」がちゃんとはいっていた。とくに辻征夫に、ロジェ・グルニエ『チェーホフの感じ』(山田稔訳・みすず書房)をテーマにした、何篇かの詩があると知ったときの感動のような気持ちは、いまでもよく思い出せる。おなじように菅原克己にも、シャルル・ルイ・フィリップについての詩がある。そんなとき、自分がいる場所がまちがっていないような気がする。
 グルニエの『チェーホフの感じ』は、ほんとうにすてきな本だ。どこかに復刊してほしい。ついでに、筑摩書房は昔の筑摩叢書でだした『私のシベリヤ――香月泰男文集』を文庫にしてほしい。あと平凡社は、山田宏一『友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌』(平凡社ライブラリー)を品切れにするのをやめてほしい。







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